2ntブログ
 

カッコウの官能小説劇場

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

*    *    *

Information

□ 聖娼アイドル ニンフェ □

序章(仮) リ・デビュー 1

 -1-
 暗がりの中、彼は居心地が悪そうに、もぞもぞと辺りを見回した。
 彼が座っているのは、大きめのライブハウスに並べられた座席の中程である。前方にはステージが広がっている。
 座席はのっぺりとしたプラスチックの白い仮面で顔を隠した男達で満席だった。シュールで薄気味悪い光景である。
 そして彼も同じ仮面を着けて座っている。この非現実的な光景の一部なのだ。
(まったく、一体なんだってんだ。アイドルのライブでこんな変な演出聞いたことないぜ。びっくりさせようってのか? それにしても趣味が悪いよ)
 彼はアイドルのライブイベントの観客として、ここに居るのである。

 川端千尋、高遠志織、友利日菜の三人の美少女からなるアイドルグループ「ニンフェ」。
 彗星のようにデビューしてから一年、人気は爆発的に急上昇を続けた。CMや音楽番組、さらにはバラエティに引っ張りだこで、テレビに映らない日は無いと言っていい。今や名実共に国民的アイドルと呼ばれるに相応しい存在に上りつめている。

 そして彼にとってニンフェは、今や人生の全てと言っていい存在だった。
 彼は、独身の公務員という環境の許す限り、時間も金も可能な限りニンフェのファン活動に注いでいる。
 幼少期から様々なアイドルのファンであり続け、いっぱしのマニアを気取っていた彼にとって、ニンフェを追いかけたこの一年は、奇跡のように特別な体験だったからだ。
 完璧なルックスを持ち、テレビ局やレコード会社の大きなプッシュの下デビューした彼女達を、初めはアイドルらしい初々しさや生っぽさに欠けていると、斜めに見る気持ちもあった。
 しかし、テレビ番組の受け答えでは幼いながらも健全な知性を、雑誌インタビューではアイドルという仕事への誠実な態度を、ラジオのおしゃべりでは普通の女の子らしさを感じた。
 何より、ライブに通い彼女達の生のパフォーマンスに触れて、彼女達がどれだけ真剣に自分達ファンを楽しませようと頑張っているかが、目の肥えたアイドルマニアの彼にも真っ直ぐに伝わってくる。
 彼は、ニンフェこそが自分が夢に描いていた理想のアイドルであることを確信し、この一年応援の最前線に立つことを全てに優先してきた。その甲斐あってか、ニンフェは瞬く間にスターダムにのし上がり、デビュー一周年記念の武道館コンサートでは、ステージ上の彼女達と共に彼も男泣きに泣いたのだった。

 その彼に、シークレットライブへの特別招待状が届いたのだ。法外とも言える高額の参加料にも関わらず、一も二もなくそれに飛びついた。絶対秘密厳守でそれを破った場合厳しいペナルティがあります、という脅しのような注意書きも、特別なイベントへの期待を膨らませただけだった。

 しかし、指定の集合場所に着いてからは奇妙なことばかりだった。
 仮面を渡されイベント中は絶対に取らないように指示され、厚いカーテンで窓が覆われたバスに乗せられた。大音量でニンフェの曲を聴かされながら、小一時間ほどバスに揺られ、ライブハウスらしきこの場所まで連れて来られたのだ。案内するスタッフに質問をしても、特別サプライズ企画ですから、としか答えなかった。
(まさか、騙されて何か犯罪に巻き込まれたとか……。でも、ニンフェファンを集団で誘拐してどうするんだよ、ありえないよなあ)

 その時、スピーカーからアナウンスが流れた。
『皆様、長らくお待たせしました。これよりニンフェ、スペシャルイベント「リ・デビュー」を開始いたします。まずは秘蔵ドキュメンタリームービーをご覧下さい』
(やっと始まるかと思ったら、映画かよ。折角の小さい箱でのライブなんだから、一秒でも長く生のニンフェを見せて欲しいのに)

 そんな歯がゆい思いも、ステージ上のスクリーンに映された映像ですぐに吹き飛ぶ。
(ああっ、千尋ちゃんだ。まだ若いなあ。デビュー前はこんな女の子だったんだ。普通の女の子の千尋ちゃんも可愛い)
 それはデビュー前からのニンフェの少女達の姿を追ったドキュメンタリー映画だった。今まで見たことの無い秘蔵の映像で語られる、アイドル達の素顔。それは、とんとん拍子にスターダムにのし上がったように見えるニンフェが、いかにストイックに努力を重ねていたのかの記録でもあった。
 デビュー前のレッスンに明け暮れる日々、歌も踊りも、なかなか要求されるレベルには到達できない。クラシックバレエの癖が抜け切れないと注意される千尋、年上なのにダンスの経験が無く他の二人に遅れていることに悩む志織、自信のあった歌を感情がこもっていないと否定され悔しがる日菜。テクニックが向上しても、今度は表現力に注文が飛んだ。それぞれに、何度も超えなくてはならない壁が立ち塞がる。
 何度も涙を流しながら、時には孤独に自分の力で、時には仲間と励まし合ったりぶつかり合ったりしながら、少女達は成長し壁を乗り越えていく。
(三人とも、こんなに苦労して頑張っていたんだ。厳しいレッスンの成果だって頭では分かっていても、いつも凄く楽しそうに歌っているから、どこかで、天才の彼女達は軽々とパフォーマンスをこなしてるような気がしていた……)
『私には、もうこの道しかないって決めたんです』
 インタビュアーに千尋が澄んだ声で答える真正面からのショット。化粧気のない透明な美しさは、整った顔立ち以上のもので、彼の心に突き刺さる。
(ああ、千尋ちゃん……君達はどうしてその年で、そんなに純粋で真っ直ぐな覚悟ができるんだろう……)
 そして念願のデビューを果たし、少女達は華々しく表舞台に立つ。これまでの苦労が報われるかのように喝采を受け、喜びの熱い涙を流しながら抱き合う少女達。
(あそこに僕もいたんだ。本当は馬鹿にする気が半分以上で見に行ったんだけど、行かなかったら一生後悔していたな)
 観客と感動を分かち合う喜びを知った少女達は、現状の自分達に満足しなかった。もっと大きく、より深く、ファン達との幸せの場を広げようと、さらなる努力を重ねる。
 忙しくなった状況と、華やかに一転した環境は、表から見えるほど順風満帆では無かったのだ。重圧やストレス、それに予期せぬトラブルが年齢的にはまだ子供の彼女達に降りかかる。
 そんな逆境でも、彼女達は真っ直ぐに立ち向かった。ファンのことを第一に考えできる限りのパフォーマンスで状況をフォローする。
(ああ、あの機材が故障したライブ、本当は新曲披露するはずだったのか。アカペラで歌ったり、観客と一緒に歌ったりした後、会場の出口で全員と握手して、ファンには伝説のライブになっちゃったけど、本人達は悔しかったんだなあ)
 必死で応援していた自分の思い出と重ね合わせてみると、舞台裏で頑張る姿に感動もひとしおである。
 そして武道館公演をやりきってステージに立つ三人をバックショットで捉えたところで、映画はエンドロールに入る。
 彼はその時の熱い感動を思い出しながら、堪えきれず涙を流していた。周りからも男のすすり泣く声が聞こえる。
『涙も笑いも共有して進み続けた三人が、ファンに感動を与えたいという、アイドルの原点を胸に夢の舞台へ到達しました。しかし、それはもうニンフェにとって一つの通過点になりました。これから彼女達の第二章が始まります。未だかつてない次元のアイドルになるために、ニンフェが新たにもう一つのデビューを飾るのです!』
 ナレーションが高らかに宣言すると、一瞬映像が消えステージが真っ暗になる。

 次の瞬間、スポットライトが舞台上を照らすと、三人の少女が映像の最後と同じポーズを決めて立っていた。奇声混じりの大歓声が爆発する。普段はおとなしい彼も、あらん限りの声を張り上げた。
(うわあ、近い! こんな小さい箱で間近のニンフェが見られるのなんて滅多にないぞ。高い金を払った甲斐があった)
 三人の少女は、腰の上までの短いマントを羽織り、チェックの制服風のスカートを履いている。マントの合わせ目からはスカートと揃いのベストが覗く。小さなシルクハットを頭の上に乗せ、目元は羽根をかたどったマスクを着けていた。
(デビュー曲の『ハート怪盗つかまえて』のPVの衣装だな、可愛いなあ! ライブでこれを着るのは初めてじゃないか)

「みなさーん、こんばんはー、千尋です」
「志織です」
「日菜でーす」
『みんなのアイドル、ニンフェでーす』
 ポーズを決めながら三人で声を合わせる。恒例の名乗りだった。何度見ても、直視できないほど美しく、それでいて目が離せないまぶしい笑顔に、見るだけで感激が湧き上がってくる。

「皆さん、いつも応援どうもありがとうございまーす」
「ニンフェのスペシャルイベントにようこそ-。今日は私達三人にとっても、記念すべき日になります」
「それは……これから全く新しいニンフェ、ある意味もう一つのニンフェを、皆さんにお見せするからです」
「あの、びっくりすることもあるかもしれませんが、どうか私たちを見守っていて下さい……」
 最初は元気いっぱい盛り上げようとするところのはずだが、少女達の話し方から、いつも以上に緊張しているのが伝わってくる。
 しかし、ここに居る選りすぐりのファンは、少女達の姿を見ただけで、ステージ上から煽る必要もない程興奮していた。初々しく緊張している様子を見れば、これからなにが始まるのかと期待を膨らませて、さらに熱狂的な声援を送る。
「ありがとうございます。それでは、聞いて下さい」

 破裂するようにドラム音が響き、スポットライトが跳ね回る中、優美な肢体が踊り出し、透き通るような歌声が響き渡る。
 『ハート怪盗つかまえて』、ニンフェの代表曲の一つだ。好きな男の子に声をかけられない内気な少女が、怪盗になって彼の心を盗めたらいいのにと願う、そんな乙女心を歌ったデビュー曲だった。
(おっPVの衣装だ! ライブで着るのは初めてじゃないか、可愛いなあ)

 だが、彼女たちが曲に合わせて両腕を上げて、マントを大きく跳ね上げた時、興奮に我を忘れかけてた彼は驚く。一瞬見間違いかと思い、彼女達の衣装を凝視して見たものが信じられない。
 少女たちは、本来着ているはずのパフスリーブのシャツを着ていなかった。
 首には衿とリボンが飾りのように首に巻かれているだけで、ベストの深いVゾーンから、柔らかい双丘の谷間を露わにしている。まろやかな突起は、踊りに合わせて窮屈そうに揺れて、今にも飛び出してしまいそうだ。
 手首に白いカフスだけを付けた伸びやかな腕は、柔らかな二の腕、なよやかな肩口を露出させ、腕を振り上げては脇の下を覗かせる。

 ニンフェはアイドルにしては珍しく、スリーサイズも公表していない。衣装も露出度が抑えめの、徹底的に清楚な路線で売り出された。だからこそ、短期間の内に男性ファンのみならず女性も含めた幅広い人気を獲得できたのだ。それでも穴を開くほど写真を見つめたファンの間では、隠れ巨乳説が語られ、熱い議論が戦わされていた。
(志織ちゃんのおっぱいが大きいのは分かっていたけど、千尋ちゃんや日菜ちゃんもこんなに大きかったなんて!)

 アイドルらしくレースで飾られたプリーツスカートも、可愛らしさを強調するミニ丈だった。
 それが、ダンスで腰が躍動した時、動きに合わせてまくれ上がるように翻る。
 視界には、柔らかく伸びやかな白い太ももと、そして乙女の股間を覆う薄布までもが飛び込んでくる。
(!? 今のパンチラってレベルじゃなかったぞ!)
 本来プリーツスカートの下にはパニエやショートパンツ等が履かれて、乙女の股間を視線から守っているはずである。ニンフェはこちらに関しても非常にガードが堅かったはずだ。
(あ、あれ、アンスコじゃなくて、普通のパンティじゃないか……)
 ターンでスカートが大きくまくれ上がって現われる薄い色の布は、見られることを前提とした厚手のものには見えない。丸みを帯びたお尻や股間にぴったりと貼り付き、秘密の部分を透かしてしまいそうな薄さだ。
 彼はアイドルのパンチラを執拗に狙うカメコ的存在を邪道として軽蔑していたが、長年の信念を捨てて今見ているものを全て写真に撮っておきたかった。

(ま、まさかニンフェが、こんな衣装を着るなんて……)
 実際にはステージ衣装としては、それ程過激な訳ではない。水着で歌うアイドルだっているのだ。
 しかし、そのような計算されたセクシーさのステージ衣装とは違い、もともと可愛らしい衣装の一部を無理矢理に剥いだような代物である。デビュー以来清純さを売りにして幅広い層に受け入れられたアイドルが着ていると、見てはいけないものから見ているような、危ういエロティシズムを強烈に感じさせた。

(一体どうしちゃったんだ、これが新しいニンフェの進む方向だって言うのか?)
 衝撃と興奮で血が上っていた彼の頭に、ふと冷や水が浴びせられる。
(本当にニンフェなのか……?)
 何しろ目の前の少女達は仮面で目元を隠しているのだ。ステージ上でアイドルが顔を隠すなんて演出としてはおかしい。
 先程の挨拶や、元気で透き通った歌声は間違いなくニンフェのものだ、しかしそんなものは録音素材でなんとでもなる。 
 彼は今までも釘付けだった舞台上の三人を、今度は別の視点で注意深く見極めようとする。
 清楚な長い黒髪の千尋は、元バレリーナらしくどんな動作でも優雅さが漂う。
 ハーフの志織は色が白く長身で、栗色のウェーブヘアだ。スタイルが良く手足が長いため、どんな動きも栄える。
 小柄でショートヘアの日菜は切れのいい動きで元気に踊っている。
 確かに背格好や特長はそっくりだ。目元以外の顔も本人にしか見えない。しかし、ダンスが微妙にぎこちない気がする。
 『ニンフェはなんと言ってもダンスが凄いんだよ』
 彼は、いい年をしてアイドルに熱を上げていることを知人に揶揄されると、いつもムキになってそう抗弁した。
 『あんなに完璧に踊りながら、歌える歌手なんて日本にほとんどいないよ。とにかく綺麗でカッコイイんだから』
 しかし、今見ているステージは、確かに卓越した技術を感じさせるものの、今まで何度も見たスムーズで切れのある動きと比べるとどこか物足りないように思えた。

(……もしかして、偽物だったりするのか?)
 ニンフェは先日デビュー一周年記念コンサートを武道館でやったばかりだ。今までの堅固なほどに健全な売り方から考えても、男女問わず大人気のトップアイドルが、突然こんな風に肌の露出をする理由がない。
(いやでも、マスクをしてたってあの三人を僕が見間違えるものか。そっくりさんか? でもあのニンフェをこんなに完璧のコピーできる娘がそんなにいるものかな……)
 彼の心は千々に乱れる。もし偽物ならば、ニンフェも、彼のニンフェへの純粋な思いも汚すようなステージである。
(あっ、また日菜ちゃんのパンツが見えた! いや、本当に日菜ちゃんかどうかは分からないけど……)
 疑いを持ちながらも、ステージ上の若々しく躍動する太股に目を奪われる。
 ニンフェのあられもないステージをあってはならないものとして憤慨する一方、見え隠れする若々しい肢体が、憧れの少女のものだったらと考えると、心臓が早鐘のように脈打つ。本物であって欲しい気持ちと、偽物であって欲しい気持ちが、ファン心理の中でぶつかり合った。

 曲が終わると、少女たちはシルクハットを舞台の袖に放る。そしてマントもするりと外してしまった。
 これで美少女達の体を覆うのは、マスクやアクセサリーを除いて、まろやかに広がる下腰を覆うミニのプリーツスカートとぴっちりと体に張り付くベストだけになった。どこか危うさを感じさせる、妖しい姿で舞台に立つ。

 目元を覆っていても、ステージに立つ少女達の頬は紅潮は隠せない。見るからに緊張しているのが伝わるが、アップテンポの音楽が流れ出すと、リズミカルかつ滑らかに踊り出す。
 これもファンにはお馴染みの曲、『RAINBOW TRAIN』だ。夢に向かって頑張る少女の気持ちを歌った、ガールズポップらしい元気な応援ソングである。
 透き通る少女達の歌声が響くが、どこか緊張の固さがある。
(あれ、これはCD音源じゃないな。じゃあやっぱり……いや、初期のライブ素材かも)

 曲の途中、ニンフェがいつもの振り付けと違う動きをした。
『RAINBOW TRAIN』では間奏の時に、三人が円になり、左手をハイタッチのように上げて合わせて回る特徴的な動きがある。ところが、円になった三人は、手を上げるかわりに左側のメンバーの胸へと手を伸ばした。
(! ボタンを外しちゃった!)
 少女達はお互いに、ベストの三つボタンのうち一番上のボタンを外してしまった。
 二つのふくらみが押しつけあう胸の谷間が、上半分のほとんど頂点に近いところまで露わになる。
(う、嘘だろ、ノーブラなのか!?)

 先程まで盛り上がっていた周りの観客も、戸惑うような空気が広がる。だが徐々に露わになっていく少女の胸元への視線は、むしろより熱さを増しでいた。
 その間にも明るい曲は進み、ステップに合わせてスカートが何度もめくれ上がり、解放された胸が大きく揺れ、彼の心をかき乱す。
 そして再び同じ振りの部分で、前と同じ動きが繰り返された。
 今度は一番下のボタンが外される。健康的な縦長のおへそが見えるようになった。
 今や、ベストは真ん中のボタンのみで止まっていて、さらに少女の肢体の危うさが強調される状態だった。
(た、確か、あの振りはもう一度あるけど、まさか……)
 彼は、固唾をのんで見守る。いつしか、彼の股間は硬く勃起してズボンを押し上げていた。
 そして、三回目のハイタッチをするべき間奏。三人の少女は、仮面の観客が見守る前で、ついに最後のボタンを外してしまった。
 ベストが胸で前に押し出されて垂れる。引き締まって美しくもなだらかなお腹と、弾む双丘の間の胸板が見える。そして形良く突き出る胸乳のなだらかなラインも。

(ベ、ベストが動いたら、おっぱいが見えちゃうんじゃ……。いや、ここまでやったら、間違いなくニンフェじゃない!)
 扇情的な胸元から目が離せないまま、彼は偽物だと確信する。
(きっと松倉プロの巨乳グラドルをニンフェのそっくりさんとして売り出す気なんだ。松倉社長の仕掛けだな。馬鹿にしやがって、ニンフェファンとして絶対許せない、ただじゃ済まさないぞ!)
 彼の中で、騙されたことに対する激しい怒りがわき上がるが、なぜか欲情の方も一層ヒートアップする。
(偽物のくせに、上手く踊って期待させやがって! お前達おっぱいをぶるんぶるんさせるくらいしか能がないアイドルとニンフェじゃ格が違うんだぞ。それに、見せるんだったらさっさと全部見せろ!)
 しかし、それから曲が終わるまでの短い間、開いたベストは彼の望みを弄ぶかのように揺らめいては元に戻る。まるで、胸の頂点で布が固定されているかのようで、結局少女達の胸のふくらみの頂点を見せるほど開くことはなかった。

 今や他の観客もあまりのギャップに驚いたためか、それとも本物か疑っているのか、先程の熱狂はどこへやら、静まりかえってしまった。だが、少女達の素肌に期待を煽られているのか、野次などは飛ばない。
 そんな観客を尻目に、次の曲が始まった。バイオリンが美しいメロディを奏でる。『月に見下ろされて』恋をしてはいけない人を想い、諦めきれない恋心を切なく歌う、メロディアスな美しい曲だ。
 三人の少女は観客に背を向け後ろを向く。『月に見下ろされて』のいつもの入り方だった。
 しかしここで、三人の少女はベストをするりと後ろに脱ぎ捨てたのである。
 その滑らかな動きに、彼は一瞬何が起こったのか理解できなかった。肩胛骨が浮き出て中央に溝が走る、なよやかな少女の背中を呆然と見つめる。
 歌の出だし、志織役の少女が優雅にターンして前を向く。
 両手を交差させ、胸を抱くようにして、乳房を隠していた。それでもその大きな乳房は完全に隠れず、上と下の柔らかい曲線が細い腕からはみ出ている。遅れて後ろの千尋と日菜も、同じように胸の膨らみに腕を押しつけ、たおやかな肩をすくめながら前を向いた。
 三人の少女が恥じらって胸を隠し、切なそうに体を揺らしながら透き通る声を響かせる。
 そのエロティックな美しさに、彼は目の前の出来事が現実とは思えなかった。

 三人は歌いながら踊り始めた。スローテンポなこの曲の振りは、ゆったりとではあるが大きく体を動かす。
 本来は両手を使う振り付けでも、常にどちらか一方の腕は乳房を抱いて守り、頂点を見せることはなかった。しかし、左右の腕を交換したり、ダイナミックなポーズを取る度に、乳房が細い腕からこぼれ落ちてしまいそうになる。
 その危うげな、見えそうで見えない動きに、彼は理性が灼き切れそうな程興奮する。
(くぅっ、今千尋ちゃんの乳首がもうちょっとで……、いや、千尋ちゃんじゃない、本物じゃないんだ)
 例え本物じゃなくても、これだけそっくりで、エロティックなニンフェを演じてくれるなら、それもいいじゃないかという考えが頭をよぎる。
(いや、だめだ、だめだ、そんなの松倉社長の思い通りじゃないか! こんなの本物に失礼だよ! 本当に一体何がしたいんだ)

 曲がサビに入る。三人は位置を順繰りに交換しながら歌い、踊る。
 志織が両腕で胸を隠しながら中央に立ち、ソロパートに入る。一瞬何かに耐えるように唇を噛み、そのせいか出だしがかすれた。
 震える歌声を切なく響かせながら、右手でマスクの端をつまみ、ゆっくりとした動きで両手を横に大きく開いた。

 ぷるんと揺れながら、女の象徴とも言うべきまろやかな乳房の全てが観客の前にまろび出る。
 それは、大きさに反して砲弾のように思い切り前に突き出ていた。色が透けそうに白く、やや大きめの乳輪も色素が薄く、綺麗な薄桃色だ。先端に突き出る乳首は、突き刺さるような熱視線に怯えるように震えていた。
 そして、ついにマスクが外され露わになったその素顔。英国人の血が混じった、彫りが深く優美でいながら東洋人らしい柔らかさもあわせ持つその顔は、見間違えようもなく高遠志織本人である。
(し、志織ちゃん、本物の志織ちゃんだ! ま、まさかそんな、あり得ない……)
 彼は雷に打たれたようにぶるぶる震えながら、目を見開いていて、トップレス姿で歌う高遠志織を見つめた。
 彼が全身全霊をかけて応援してきたアイドルが、女の象徴とも言うべき豊乳を剥き出しにして見せつけている。今見ている光景が、到底現実のものとは思えない。
 そして実は、志織は彼の自慰のおかずとして最もお世話になっている。何度も想像に描いたその乳房が、想像以上に美しいことに、彼は感動していた。

 ソロパートが終わる。志織はまた胸を両腕に抱きながら、素早く日菜と入れ替わる。
 そして、ショートカットの愛くるしい美少女もまた、同じように隠していた顔と乳房の守りを解いた。その細い腕は明らかに震えている。仮面を外された大きな瞳から、一筋の涙が真っ赤な頬の上を伝う。
 出てきたのはふるふると揺れる、おわんのようなおっぱいだった。健康そうな薄小麦色の肌が形良く盛り上がり、小さめの乳首は野いちごのように美味しそうだった。同年代の少女の平均よりはかなり大きめだろうが、志織の巨乳に比べると小さく見える。日菜の可憐な歌声に合わせて微かに震えてているのがとても可愛らしい。
(日菜ちゃんのおっぱい……本物の日菜ちゃんのおっぱいだ! 可愛いくていやらしくて、たまらないよ)
 可憐な風情に、見るのを罪悪もに感じながらも、目は離せず、興奮は高まるばかりだった。

 そしてついに、千尋が入れ替わってフロントに立つ。
(ち、千尋ちゃん、千尋ちゃんも本当に本人なのか、そしておっぱいを……)
 三人の中でも、彼が最も憧れる美少女であり、女神のように崇拝している存在だった。
 彼はしばしば志織と陽菜の性的な妄想で、自慰にふけった。しかし、千尋に関してはそれができなかった。それをやろうとすると強い罪悪感に襲われ、自分が汚らしい存在に思えてしまうのだ。
 その千尋が今、慎ましく隠されていた乙女の乳房をさらけ出そうとしている。彼女は頬を紅潮させ、けぶるような瞳には悲壮なまでの決意が見えた。
 彼は、見たいという燃えるような欲望と、見てはいけないという強烈な罪悪感に、心が引き裂かれそうだった。
 期待と畏れに震える時は一瞬に過ぎ、千尋は仮面を外し、腕をゆっくりと開いた。
 白くまろやかな半球が、腕の押さえから解放され、柔らかさと弾力を示して揺れる。男達の衆目に暴かれたそれは、奇跡のように滑らかな曲線を描いていた。真円の桜色の控えめな乳輪と乳首だけが視線の最前線で恥ずかしげに揺れる。
 巨乳と言っていいほどの豊かさで有りながら、重力に逆らう完璧な形が、下品さをみじんも感じさせない。むしろ自然の作る女体美に、神々しさに似た感銘に打たれる。
 まろやかな双丘が彼女の透き通った歌声と共に微かに揺れるのを見て、彼は頭が真っ白になる。快感が股間を貫き、指一本触れないのに射精したのだ。膝ががくがく震えて崩れ落ちそうになるのを必死で耐える。

 最後のパートで、後ろの二人も前に出ながら再び腕を開く。三人の少女がそれぞれの美乳をたわわに揺らしながら、優雅に舞い踊り、ハーモニーを響かせる。
 その夢のような美しさを現実のものとは信じられないまま、曲が終わりライトがゆっくりと消えていった。

→ NEXT
関連記事

*    *    *

Information

Date:2014/02/02
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://aoikakkoh.blog.2nt.com/tb.php/41-17095e65
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)