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カッコウの官能小説劇場

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□ 聖娼アイドル ニンフェ □

序章(仮) リ・デビュー 3

-3-
 それから、休憩を挟みますので暫くお待ち下さいとのアナウンスが流れた。
 その間も、彼はずっと夢見心地だった、未だに千尋や志織、陽菜の裸をこの目で見たことが信じられない。それでも、気絶しそうな程集中して見た、先程の光景は目に焼き付いて、すぐに細部まで思い出せる。
(でも、可哀想だったな……)
 彼女たちがどんなに辛い思いでいたのか、近くで様子を見ていればまざまざと感じられる。
 しかし、それ故にこそ異常なまでに興奮してしまったのも自覚していた。
(ああ、やっぱり千尋ちゃんはあそこも綺麗だった……)


『皆さん、お待たせしました。折角のニンフェの「リ・デビュー」イベント、このままじゃ終われませんよね。みなさん、どうか盛大なアンコールをお願いします』
 正直、今までのだけでも十分過ぎる程だと彼は思ったが、さらに何かあるのなら、それを逃す手はない。
 彼が声を張り上げるのと同時に、アンコールの合唱が始まる。
 
 舞台袖からニンフェの三人が小走りに出てくると、大きな歓声があがる。
 アンコールでは定番のTシャツ姿である。ただ普通でないのは、Tシャツしか着ていないことだった。
 「聖娼女ニンフェ リ・デビュー」というデザインロゴがプリントされた、Tシャツの裾を手で引っ張って伸ばし、ぎりぎりで股間を隠している。そのせいで、襟元は谷間が見えるほど引き延ばされ、乳房にぴったりと貼り付いて乳首が浮き出てしまっていた。

「皆さん、今日は、本当に」
「「「どうもありがとうございました」」」
 千尋の音頭で、三人は、頭を下げてお礼を言う。
 多少目が赤くなっているが、メイクを直してはにかむ彼女たちは、まばゆいばかりだった。
「皆さんいかがだったでしょうか。私達のリ・デビューは」
 千尋が問うと、観客からは歓声とともに、「サイコー」とか「エローい」等の声が飛ぶ。
「あ、ありがとうございます。こんなのニンフェじゃないと思われるのだけが不安でした……」
「そんな事無いよ!、頑張ってたー!」
 思わず彼は叫んでいた。
 千尋が恥ずかしそうに彼を見て微笑んだ。それだけで、天にも昇る心地になった。
 例え卑猥さを前面に押し出していても、ニンフェらしいハイクォリティで誠実なパフォーマンスだった。
 ニンフェが本心では嫌がっていたとしても、頑張っている以上、応援せざるを得ない。自分の下劣な欲望を棚上げにしているのは分かっているが、そのファン心理も本当だった。

「それじゃあ、皆さんこれからもエッチな聖娼女ニンフェを応援してくれますかー」
 志織の問いに、観客は大歓声で応える。
「ありがとうございます。……でも、今日は私達沢山失敗しちゃいましたぁ。や、やっぱりどうしても恥ずかしくて……、ごめんなさい!」
 陽菜が大きく頭を下げて謝る。
「私達、こんな風に男の人に裸を見せるのは、初めてだったから、どうしても……」
 失敗のおかげでニンフェのヌードを見られたのだから、むしろありがたいくらいだと彼は思った。
「……私達はまだ、皆さんに私達の全てを見ていただくという覚悟が足りなかったと、反省しています」
 千尋が引き継ぐが、彼女も頬が紅潮し声が上擦っている。
「これから私達、お詫びの印に、皆さんに私達の覚悟を見ていただこうと思います」
「さっきは、一回ミスする毎に一枚脱ぐってルールだったよね。私達は最後に全部脱いだ後で失敗しちゃったから……」
 志織が言いながらうつむく、心なしか震えているようだ。
「……私達、最後の一枚を脱いだ後で、さらにもう一つ体を隠すものを脱ぎました……」
 そこで、千尋、志織、陽菜の三人は互いの顔をしばし見合う。頬を紅潮させ、涙のにじんだ目で決意を確認するかのように、小さくうなずいた。

「見て下さい、これが私達の覚悟です!」
 千尋が叫ぶと、三人は観客に向けて押さえていたTシャツの裾をめくり上げた。
 彼の目に飛び込んできたのは、三つの白く無毛にされた股間だった。
 先刻まで萌えていた筈の毛は全て剃り取られている。なだらかに鍛えられた腹部の下、滑らかに盛り上がった白い三角地帯。さらに先程まで乙女達が必死で守ろうとした、三者三様の肉畝の合わせ目までもが、見上げる観客の目の前に余すことなく暴かれてしまう。

 衝撃で静まりかえる観客達に向けて、さらなる衝撃が襲う。
 黒髪の美少女はそのままTシャツを脱ぎ捨て、完全なる全裸になると、両脇から志織と陽菜が千尋の膝裏を持って、全裸の女体をぐっと抱え上げた。
 清純そのものだった千尋が、女性にとって最も恥ずかしい姿勢であるM字開脚に抱え上げられたのだ。
 大勢のファンの目前に、無毛の秘部と、その下のすぼまりまでもを晒し出す。
 千尋は今や顔を真っ赤にして、息を荒くしている。嫌々をするように顔を横に振ると、汗で髪の毛が数本まとわりつくのが、凄艶である。
 しかし、彼女は涙の溢れる目を観客に向けて、震える繊細な指を柔らかな自分の秘肉に持って行き、綺麗な薄紅色の花びらをゆっくりと開いた。
「こ、これが、川端千尋の一番恥ずかしい場所です。どうぞ皆さん、よくご覧になって下さいっ」
 千尋の絞り出すような言葉を聞くまでもなく、彼はそこから目が離せない。
 柔肉と肉花びらが複雑に折り重なるその内部は、紅色がやや薄くなり、ぬめるように光っている。目のいい彼が全神経を集中してみると、下の方に空いた穴の入り口がひくつくのが見えた。
(あ、あれが千尋ちゃんのおまんこの穴……)
 そこに自分の固く勃起しているものを入れられるなら、死んでもいいと本気で思った。おそらく、今ここで視線を集中させている男の大半がそう思っているだろう。

「ああ……」
 千尋が悲しそうにうめく。全裸を見られて気を失う程に羞恥心の強い乙女にとって、男の視線は開いた肉壺に刺さるように感じるのだろう。
「ど、どうですか、喜んでいただけたでしょうか」
 震え声でさらに恥ずかしい問いを男達に向かって発するが、観客は余りのことに何も答えられず、沈黙だけが会場を支配する。
「ああっ、恥ずかしいぃっ……」
 沈黙に耐えかねたかのように千尋が泣き声を漏らすと、いくつか「頑張れー」や「おまんこ綺麗だよー」と言う声が上がる。
「あ、ありがとうございます、私も皆さんに見ていただけて、う、嬉しいです」
 そこでようやく千尋は二人に下ろされるが、足下がふらついて志織に支えられる。

 志織は全裸の千尋をしばらくぎゅっと抱きしめていた。そして、意を決するように、Tシャツを勢いよく脱ぐと、肉巨峰を揺らして自分も全裸になった。
 そして、女神のような彼女もまた、先程の千尋と同じように惨めな姿で仲間に抱きかかえられる。空中M字開脚で、そり上げられた淫猥な性器をファンの目前に捧げ出した。
 志織はその状態で耐えきれずに両手で顔を覆ってしまう。何度かすすり泣く声を漏らすと、千尋が耳元で何か励ました。
 ようやく指を股間にやると、少し赤くなった目で観客を見ながら、ゆっくりと秘花を開いて見せた。
「こ、ここが私の、高遠志織の、一番いやらしい女の部分よ。わ、私の覚悟、しっかり見てよね」
 真っ赤な顔でわななきながら、上擦った声で告げる
 志織の花びらは、大きく薔薇のようでぷるぷると震えている。内部は綺麗なピンク色で、肉豆も大きいのか鞘から出ているのが見える。ひくつく穴はやや下側寄りだった。
「ど、どう、私のここ、千尋のほど綺麗じゃないかもしれないけど……」
 呟くように言った志織の言葉に、右から抱えている千尋が恥ずかしそうに顔を背ける。
 それに対して、「綺麗だよー」「エロいー」等のの声が上がる。
「あ、ありがとう、私のいやらしいところも、全部好きになってね」
 無理に作った笑顔で精一杯可愛らしくそう言うと、志織は降り立ち、せつなげにため息をついた。

 最後に残ったのは、最年少の陽菜だった。可憐な顔に悲壮感を漂わせて震えている陽菜に、千尋と志織は哀しげに気遣う視線を向ける。
 しかし、それでむしろ覚悟が出来たのか、陽菜はTシャツをゆっくり脱ぐ。張りのある乳房をプルンと揺らし、しなやかな体が現れる。恥ずかしげに悶えてもなお、若々しいエネルギーが溢れる健康的な少女の裸体だった。
 そして陽菜も顔を真っ赤にして、恥辱のM字開脚に身を委ねる。元々年齢よりも未成熟な性器が、無毛になった今、更に幼く見える。それを前方に突き出した様は、幼女がおしっこをさせられているようで、観客の背徳感と興奮を煽る。
 陽菜はぴったりとくっついた一本筋に指を合わせると、幼い性器を割り開いた。
 露わになった秘密の花園はピンク色で、隠れていた小さな花びらと穴が、怯えるようにひくついていた。
「うぅっ……、あぅぅ……」
 食いしばった口からは嗚咽が漏れる。傷つきやすい秘所を観客に自ら見せつける恥辱に耐えるだけで精一杯なのか、陽菜は何度か可憐な唇を開いて何か言おうとしては、荒い息と嗚咽だけを漏らした。
 辛そうに言葉を出せない陽菜を見かねたのか、志織が観客に向かって口を開く。
「どう、陽菜ちゃんの。とっても可愛いよねー、みんな好きでしょー」
 観客は、それに卑猥な大歓声で応えた。
 陽菜はそれを聞いてぶるぶると震えたが、最後にようやく一言を絞り出した。
「あくぅ……こ、これが友利陽菜のおまんこですっ……あぁ……」
 陽菜の堅くつぶった目から、トマトのように真っ赤な頬に涙がこぼれた。
 ようやく辱めのポーズから解放された陽菜は、志織の胸に顔をうずめる。
 千尋も慰めるように後ろから抱きつき、三人の美少女は恥辱に傷ついた心を慰め合うかのように抱き合った。

「みんな、私達の覚悟を分かってくれたかな。女の子として絶対見せちゃいけない所まで、全部見せちゃったよ……」
「とっても恥ずかしかったけど、もう陽菜たちに隠すところはどこもありません。皆さんに喜んで貰うために、どんな恥ずかしいことでも我慢します」
「聖娼女ニンフェである私達の全ては、ファンの皆様に楽しんでいただくためのものです。この顔も、手も、腕も、足も、太ももも、おっぱいも、お尻も、そして……」
 言葉に合わせて、三人は体の部分を指し示す。
 お尻で後向きになり、丸く突き出る若尻を見せつけると、後ろを向いたまま上半身をかがめて足を大きく開いた。
「「「この、おまんこもです」」」
 三人は最も卑猥な単語を唱和しながら、高く掲げた美尻を振りながら、その下の秘裂を指で開いて観客席に見せつけた。
 背中ごしに振り向いた美少女達は、真っ赤な顔に可憐な笑顔を作り、世にも卑猥な宣言を実行するのだった。
「皆さん、こんないやらしい私達を応援してくれますか? 好きになってくれますかー?」
 千尋の問いに対して、観客席は興奮のるつぼになって、肯定の大歓声を三つ並んだアイドルの尻振りに叩きつける。彼も一緒になって意味の通らない大声を上げていた。

「ありがとうございまぁす。みんなの期待に応えるために、精一杯可愛くエッチに頑張ります」
「それじゃあ、最後にこの姿で三曲続けて聞いて下さい……」
 生まれたままの姿のトップアイドルが、その肢体の全てを見せつけながら歌い踊るという、ファンにとっては夢のようなステージが始まった。
 少女達は自分達のあられもない姿を忘れたかのように、眩しい笑顔で歌い踊る。
 だが本当は、忘れるために普段通りのパフォーマンスに集中しているのだということに、彼はすぐ気がつく。
 その証拠に、乳房を思い切り揺らしたり、大きく開脚して秘所を晒したり、お尻を振るような動作をする時には、上擦った興奮の表情の中から、抑えきれない羞恥が苦悶のようにが伝わってくる。
 その羞恥を、更なる興奮と集中力で抑え込み、妖精達は踊り続けた。
 普段のニンフェに比べれば、必ずしも細かいクォリティは高くないが、それ以上に異様な熱さのこもったパフォーマンスだった。
 その熱気と興奮を観客も共有して、声援でステージ上に返す。
 会場全体が興奮状態に包まれる中、彼は、全裸で恍惚と舞い歌う少女達の美しさに感動しながら、ずっと射精し続けているような感覚を味わった。
(ああ、ニンフェは最高だ、このために生きてきたんだ……)


   *
「あぁっ、はんっ、はぅぅんっ、凄いっ、社長っ、もう、いってしまいますぅっ」
 ステージの機材が並ぶコントロールルームに、甘い嬌声が響く。
 手塩にかけてきた少女達が全裸で踊るのを見ながら、松倉享司は高級スーツを着たまま、ニンフェのマネージャーの倉木美鈴の腕を掴み、後ろから犯していた。
 美鈴もスーツ姿だが、はだけたブラウスから巨乳が下向きにぶら下がって揺れ、タイトスカートも思い切りまくり上げられ、白くて大きな尻と太股がぶるぶると震える。三十前の熟れた体をのけぞらして、元アイドルは身も世もなく、よがり泣く。
「まだだ、もう少し我慢しろ」
「あんっ、そんなっ、はんっ、奥まで突かれたらっ、はぁぁぁんっ、耐えられませんっ」
 甘く懇願するのは、先程アナウンスをしていたのと同じ声である。大音量で音楽が鳴り響いているので外に漏れる心配はないため、思い切り声をあげている。
「ああぁっ、もうだめぇっ、いっちゃうっ、許してぇ、んあぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 限界に達した美鈴は、元アイドルの美貌を歪ませては、膣内の筋肉を思い切り収縮させる。それに対抗するように剛直が膨らみ、爆発するような脈動と共に、内奥に熱いしぶきを感じ取る。
 それは、丁度ニンフェが曲の最後にポーズを決めたのと同じ瞬間だった。美鈴は絶頂に達しながら、後ろからのしかかっている男も自分と同じく、舞台上の裸の少女達を見ていると感じた。

 胎内から、柔らかくなった肉棒が抜けていく。荒い息をつきながらも、二人は手早く身なりを整える。まだ重要な仕事が残っているのだ。

 松倉と美鈴が控え室に入っていくと、バスローブに身を包んだ少女達が、ソファーの上で抱き合うように身を寄せ合っては泣き声を上げていた。
 アイドルとして華やかに活躍していても、十代の少女である。性的に見られるだけでも、戸惑いと羞じらう繊細な年頃だ。
 もちろん、その若い美しさで人前に立つ以上、性的な視線を送る男は沢山いた。だが、強力な芸能事務所が堅くガードし、清楚さと実力を看板に売ったのである。その事を意識させられることはできる限り抑えられていた。
 何よりアイドル達本人の魅力が、性的な視線を自然な好意や憧れに変えてきたのだ。外見の美しさに惹かれて興味を持った男も、千尋の優美な気品、志織の誇り高い優しさ、陽菜の天真爛漫な快活さに触れると、彼女達の心根に夢中になった。
 それぞれ子供の頃から打ち込むものがあり、またアイドルになってからは学校にも行かずにレッスンと仕事に忙殺される生活を送ってきた。
 むしろ同年代の少女と比べてもプライベートで男性と触れ合う機会は少なく、自然と恋愛にも疎くなった。ファンが勘ぐる以上に、彼女達はイメージ通りの清純さを保っていたのである。
 そんな汚れ無き乙女が、大勢の男達の前で服を剥ぎ取られ、その傷つきやすい柔肌を全て晒した。少女の意に反して豊かに盛り上がる乳房や、くびれた腰から広がって突き上がる丸い臀部と滑らかな太もも、そして絶対に秘すべき罪深い淫肉の割れ目までも、全て獣欲の視線に暴かれた。
 少女達が、泣き疲れるまで子供のように泣くのも無理は無かった。

「よう、お疲れさん。良くやり遂げたぞ、お前達。アクシデントもあったが、全体としてはかなり上出来だ。客の度肝を抜いて、それでいて徹底的に満足させるエロさだったぜ。まずは、裏ニンフェのリ・デビュー成功おめでとうだ」
 松倉享司は、ニンフェが所属する芸能事務所イシュタル・プロモーションの社長である。
 十年前に芸能事務所の松倉プロを立ち上げてからは、破竹の勢いで人気女優やグラビアアイドルを多数デビューさせ、三十代半ばにして業界の風雲児と呼ばれている。
 伝説的な映画女優だった母親譲りの甘いマスクに、イタリア製スーツを隆と着こなす姿は、先程まで激しく美鈴と交わっていたことなど微塵も感じさせない。若き成功者のみが持つ自信に溢れた態度は、どんな女も一瞬惹かれる心を意識せざるを得ないだろう。
 しかし、口元に柔らかい笑みを浮かべてなお暗い凄みのある目つきは、どこか崩れた雰囲気を感じさせる。それすらも、芸能界の華やかさや、男らしさに表裏一体のものと感じさせた。

「わ、私、やっぱり嫌です。こんな事もうやりたくありません!」
 普段は強気な志織が、微かに恐れを滲ませながらも松倉に抗議する。
「今更何言ってるんだ。やる前も嫌がっていたけど、実際やってみたらきちんとできたじゃないか」
「こ、こんなに恥ずかしいなんて、分かってなかった……。ああ、もう死んだ方がまし……」
 そう言って、志織は再び泣き伏してしまう。千尋が哀しそうに背中をさする。
「初めてだからな、お前達が辛かったのはよく分かる。本当に頑張ったよ。でもな、一回裸を見せてしまえば、なんて事はないだろう、次からはもっと楽になるさ」
「でも、あんな事まで、……毛を剃るなんて酷い。あんなに沢山の人に見られて……」
 日菜が恨めしげに言うと、顔を手で覆って泣き伏す。確かに失敗が多ければ、そうなるかもしれないと言われていた。しかし、あの恥辱の中で失敗せずに済むことなどできただろうか。今回は乳房と下着を見せるくらいで終われるかもしれないとの当初の希望は、無惨にも打ち砕かれた。

「お互い納得するまで話し合ったはずだろう、それを今更ご破算にはできないぜ。まあ今はショックなのはよく分かる。とりあえずはゆっくり休んで、調子を整えておけよ。」
「あの……、やっぱり私、分かりません。こんな活動に、どんな意味があるんでしょうか?」
 千尋の言葉に、松倉は踵を返して出て行こうとしたところで、足を止めて振り向く。
「あ、あの観客数では、それ程利益が出るとは思えません。例え出ていても、こんな活動をしていることが世間に知られたら……、一体何のために、こんなことをしなければならないんですか?」
 千尋は、観客数、すなわち自分の卑猥な恥態を見る男達の多さに身がすくんだことを思い出す。一方で、ニンフェとして動員できる数を考えると、二桁も少ないだろう。恥辱に心をえぐられながらも、どうしても拭い去れない疑問だった。
「それは、お前達の考えることじゃない。心配しなくても、金の稼ぎようはいくらでもあるし、外に漏れることも絶対に無い。お前達は客を喜ばせることに集中しろ」
 にべもなく答える松倉の言葉はそれ以上の質問を許さない。だが千尋は納得できなかった。あんな非常識でふしだらな行為に合理的な理由を求めても仕方がないのかもしれない。でも、こんなに恥ずかしい思いをしているのだから、せめて社長がどんな思いでやらせているのか、それを知りたかった。
 しかし、男はそれに答えることなく、扉の外に消える。


「やっぱり、まだあの子達にはきつかったのでは無いでしょうか。いきなり毛を剃らなくても……」
 コントロールルームに戻ると美鈴が躊躇いがちに言う。
「まだ裸を見せただけじゃないか。今回はとりあえずの挨拶さ。これからもっともっと、過激にしていくんだぜ。あいつらにもある程度覚悟をさせておかないとな」
「でもあの娘達は、今回のが最大だと思っていますよ。体を見せながらコンサートをするのが聖娼女ニンフェの活動だと」
「ふん、それはそれでいい。ニンフェ自身が分かっているより、ある程度ハプニングにした方が良い、全部予定調和じゃ客は興奮しないからな」
「でもライブとしては、あまりにもリスクが高過ぎるのでは? 今回だってあの娘達が舞台に立ち続けることができるか、ぎりぎりでしたよ。毎回こんなにひやひやするのかと思うと……」
「大丈夫だ。なんだかんだ言って三人とも芯は強い。羞恥心にも慣れてくるし、そう簡単にぽっきり折れることにはならないさ。でも、メンバーの羞恥心の限界を見極めるのもお前の仕事だぞ。今回のケアも含めて、メンタルには気を遣いすぎるって事はないからな」
「それは承知しておりますが、実際にこれから、あの娘たちがどういう反応をするのか、不安です。そもそもこのステージに立たせるのもあんなに大変でしたから」
 美鈴は眉をひそめて溜息をついた。


 彼女たちが二年前松倉に見出され、イシュタル・プロのアイドルになったのは、それぞれのっぴきならない事情があった。
 千尋はバレリーナへの夢が絶たれそうな時に、国際コンクールに入賞すればすべての資金を松倉が提供する、さもなければアイドルになるという勝負をした。結果、15才の千尋は惜しくも入賞を逃す。
 志織は母親の手術費用を出すという理由で、アイドルになった。イギリス人の男と駆け落ち同然に結婚した母親は、離婚して日本に戻って以来病気に苦しみ、家計は志織が雑誌モデルで稼いでいる状態だった。
 陽菜は、空手道場を経営する父親が、陽菜に悪戯をしようとした男に重傷を負わせてしまったのを、松倉にもみ消して貰うことを条件に、アイドルになることを承諾した。
 その時に少女達は、性的な活動をする計画があることを、説明されてはいた。しかしその説明は曖昧で、今以上にうぶだった少女達は少しエッチな水着グラビア程度だと、希望的観測で自分を納得させたのだ。

 しかも、イシュタル・プロに所属してから一年は、徹底的に歌と踊りの訓練に明け暮れた。一流の教師による指導のもと、厳しくも真面目なレッスンの日々が続いた。そしてデビューしてからは、欲望渦巻く芸能界で事務所に固く守られてきた。
 そんな中三人は、裏での活動の話について、引っかかりを感じながらも思い出さなくなっていた。アイドルとしてニンフェが成功すれば、リスクのある活動をする必要など無くなるだろうと考えたのだ。
 あの約束は、ニンフェがアイドルとして売れなかった場合に、資金を回収するための保険のようなものだったのだ。もしかしたら、そもそも裏の活動なんてさせる気も無く、アイドルを真剣にやらせようとする社長の脅しの一種だったのではないか。そんなことまで話し合った。
 そして、ニンフェがトップアイドルになった以上もう非常識な裏の活動などありえない、そう安心していた。
 だから、デビュー一周年武道館コンサートが大成功に終わった後の、聖娼女ニンフェとしての裏活動の命令に、彼女達は驚き、激しく抵抗したのは当然だった。

 松倉は、情に訴え、理を尽くして、おどし、なだめて説得に当たった。
 そもそも裏活動についても承諾していたはずだ、今までさんざん世話になって、ここに来て約束を破るのか、芸能界では当たり前の枕接待をさせなかった代わりだ。もう準備は始まっている、今更中止したらその損害をどうしてくれる、等などである。
 少女達は泣いて嫌がった、アイドルとしてもっと頑張るからそれだけは許して欲しいと懇願し、そんなことをさせられる位ならアイドルを辞めるとも言った。
 しかし、少女達は二年間学校にも行かずにアイドル活動に集中してきた。周りの人間関係はイシュタル・プロを通した仕事のみである。助けを求められる大人はいなかった。特に、母親がまだ療養中である志織や、いつでも父親の罪を告発されかねない日菜にとっては、切り札を握られているのも同然だった。
 問題は千尋で、ある意味断固として拒否され、家族に助けを求められたら、松倉としてもどうしようも無い。どう説得するか、頭を悩ませていたところ、意外な申し出をしてきた。

「私だけが、聖娼女として活動しますから、どうか志織ちゃんと陽菜ちゃんは、許してあげて下さい。私が二人の分も頑張ります」
「……なぜ、自分だけ犠牲になろうとする?」
「志織ちゃんも、陽菜ちゃんも、家族を助けるために仕方なしに約束をしたんです。それで無理矢理いやらしいことをさせられるなんて、酷いです。間違ってます。でも私は、自分の望みのために賭をしたんです。それに負けたのだから……約束は守ります。だから、お願いです。どうか私だけにして下さい……」
 松倉は、千尋が申し出てきたことを、そのまま志織と陽菜に伝えた。それを聞いた二人は、泣きながら千尋だけにそんなことをさせる訳にはいかないと、ようやく聖娼女になることを承諾したのだった。


「根本的に嫌がっているのは、しょうがない。むしろそれが良いんだ。だから、清純派アイドルのニンフェを壊しても駄目だ。ぎりぎりの綱渡りをさせるようなもんだってのは分かってる。そこを上手くやってくれよな、頼りにしてるぜ」
「はい、社長」
 美鈴が現役の人気アイドルだったとき、さんざん芸能界上層部の男達のおもちゃになった。アイドルとしてちやほやされる一方で、醜い男達の欲望に貶められる屈辱。そのゆがみに耐えられず、精神のバランスを崩したところを、松倉に救われた。確かにその時に味わった経験は役に立つはずだ。
「でも、本当に大丈夫なんでしょうか、こんな大勢の観客に見せて……」
 自分達を特権階級と思っているような業界人ではなく、選び抜いたとは言え一般のファンも相手にこの裏活動をするのだ。正直、秘密が守られ続けるのか、とてつもなく不安だ。もし、ニンフェがファン相手に裸でコンサートをしていることがばれたら、間違いなくニンフェもイシュタル・プロも終わりだろう。
「そっちの方は心配するな。なあに、人間信じがたい話ってのは、実際目にするまで信じられないものさ。多少漏れたからといって簡単に広まる者でもない。それよりお前はニンフェのケアの方に集中しろ」
「はい」
 千尋と同じ疑問を美鈴も持っている。ただ、美鈴は松倉享司に対して絶対的な信頼を抱いていた。もし彼が破滅の道を選ぶなら、一緒にその道を進むだけだと思っている。

「ようやく、始まったんだ、俺の夢の実現が。この世界に風穴を開けてやる」
 松倉は熱に浮かされたように独りごちると、美鈴の腰に手をやり、抱き寄せる。美鈴は乱暴に服を脱がされながら、彼を受け入れる準備を始めた。

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Date:2014/02/02
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