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カッコウの官能小説劇場

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蒼井カッコウ

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カッコウ、カッコウ、エロ小説書きの蒼井カッコウです。
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聖娼アイドル ニンフェ 開幕にあたって

 ようやく、オリジナルのエロ小説を書き始められました。
 このブログ見ている人は、クイーンズブレイドのエロ小説だから読んでいたという人も多いでしょうから、オリジナルも読んで頂けるのかいささか不安です。気に入って頂けると嬉しいのですが。
 
 初めてのオリジナルエロ小説はアイドルものとなった訳ですが、昨今の三次、二次を問わない空前のアイドルブームにのっかってみた、という訳ではありません(笑)
 どちらかと言えば、公然羞恥ものの一環として、アイドルがステージ上で卑猥なセクハラを受けまくる、というシチュエーションを、思い切り書いてみたいと思ったのが大きいですね。
 でもいいですよね、アイドル。非日常的なフリフリの衣装を着た美少女が、可愛らしく歌って踊るのを見ているだけで幸せになります。
 まあ、僕のアイドルのイメージに最も影響を与えているのは本物のアイドルじゃなくて、アイドルマスターをはじめとする二次元アイドルのコンテンツだったりするのですが。
 ぶっちゃけ、リアルのアイドルについては、今まで誰かのファンになったりしたこともなく、この小説を書こうとするに当たって、動画サイトとかで、色々見て勉強したくらいです。
 ですから、アイドルファンの方には、アイドルってこういうもんじゃない! とかアイドルファンはこんな思考をしない! とかのツッコミは多々あるでしょうが、現実にはあり得ないエロさを描くのがエロ小説の良さということで、大目に見て頂ければ幸いです。

 しかし、あくまでキャラクターと設定を紹介するための序章を書いただけで、三分割する程の量になるとは思いませんでした。先が思いやられます。
 構想としても割と長い話になりそうなので、できるだけ色々なアイディアで、じっくりと三人のアイドル達をいやらしい目に遭わせていきたいと思います。
 願わくば、千尋、志織、日菜という三人の娘達を愛して頂ければ幸いです。

序章(仮) リ・デビュー 3

-3-
 それから、休憩を挟みますので暫くお待ち下さいとのアナウンスが流れた。
 その間も、彼はずっと夢見心地だった、未だに千尋や志織、陽菜の裸をこの目で見たことが信じられない。それでも、気絶しそうな程集中して見た、先程の光景は目に焼き付いて、すぐに細部まで思い出せる。
(でも、可哀想だったな……)
 彼女たちがどんなに辛い思いでいたのか、近くで様子を見ていればまざまざと感じられる。
 しかし、それ故にこそ異常なまでに興奮してしまったのも自覚していた。
(ああ、やっぱり千尋ちゃんはあそこも綺麗だった……)


『皆さん、お待たせしました。折角のニンフェの「リ・デビュー」イベント、このままじゃ終われませんよね。みなさん、どうか盛大なアンコールをお願いします』
 正直、今までのだけでも十分過ぎる程だと彼は思ったが、さらに何かあるのなら、それを逃す手はない。
 彼が声を張り上げるのと同時に、アンコールの合唱が始まる。
 
 舞台袖からニンフェの三人が小走りに出てくると、大きな歓声があがる。
 アンコールでは定番のTシャツ姿である。ただ普通でないのは、Tシャツしか着ていないことだった。
 「聖娼女ニンフェ リ・デビュー」というデザインロゴがプリントされた、Tシャツの裾を手で引っ張って伸ばし、ぎりぎりで股間を隠している。そのせいで、襟元は谷間が見えるほど引き延ばされ、乳房にぴったりと貼り付いて乳首が浮き出てしまっていた。

「皆さん、今日は、本当に」
「「「どうもありがとうございました」」」
 千尋の音頭で、三人は、頭を下げてお礼を言う。
 多少目が赤くなっているが、メイクを直してはにかむ彼女たちは、まばゆいばかりだった。
「皆さんいかがだったでしょうか。私達のリ・デビューは」
 千尋が問うと、観客からは歓声とともに、「サイコー」とか「エローい」等の声が飛ぶ。
「あ、ありがとうございます。こんなのニンフェじゃないと思われるのだけが不安でした……」
「そんな事無いよ!、頑張ってたー!」
 思わず彼は叫んでいた。
 千尋が恥ずかしそうに彼を見て微笑んだ。それだけで、天にも昇る心地になった。
 例え卑猥さを前面に押し出していても、ニンフェらしいハイクォリティで誠実なパフォーマンスだった。
 ニンフェが本心では嫌がっていたとしても、頑張っている以上、応援せざるを得ない。自分の下劣な欲望を棚上げにしているのは分かっているが、そのファン心理も本当だった。

「それじゃあ、皆さんこれからもエッチな聖娼女ニンフェを応援してくれますかー」
 志織の問いに、観客は大歓声で応える。
「ありがとうございます。……でも、今日は私達沢山失敗しちゃいましたぁ。や、やっぱりどうしても恥ずかしくて……、ごめんなさい!」
 陽菜が大きく頭を下げて謝る。
「私達、こんな風に男の人に裸を見せるのは、初めてだったから、どうしても……」
 失敗のおかげでニンフェのヌードを見られたのだから、むしろありがたいくらいだと彼は思った。
「……私達はまだ、皆さんに私達の全てを見ていただくという覚悟が足りなかったと、反省しています」
 千尋が引き継ぐが、彼女も頬が紅潮し声が上擦っている。
「これから私達、お詫びの印に、皆さんに私達の覚悟を見ていただこうと思います」
「さっきは、一回ミスする毎に一枚脱ぐってルールだったよね。私達は最後に全部脱いだ後で失敗しちゃったから……」
 志織が言いながらうつむく、心なしか震えているようだ。
「……私達、最後の一枚を脱いだ後で、さらにもう一つ体を隠すものを脱ぎました……」
 そこで、千尋、志織、陽菜の三人は互いの顔をしばし見合う。頬を紅潮させ、涙のにじんだ目で決意を確認するかのように、小さくうなずいた。

「見て下さい、これが私達の覚悟です!」
 千尋が叫ぶと、三人は観客に向けて押さえていたTシャツの裾をめくり上げた。
 彼の目に飛び込んできたのは、三つの白く無毛にされた股間だった。
 先刻まで萌えていた筈の毛は全て剃り取られている。なだらかに鍛えられた腹部の下、滑らかに盛り上がった白い三角地帯。さらに先程まで乙女達が必死で守ろうとした、三者三様の肉畝の合わせ目までもが、見上げる観客の目の前に余すことなく暴かれてしまう。

 衝撃で静まりかえる観客達に向けて、さらなる衝撃が襲う。
 黒髪の美少女はそのままTシャツを脱ぎ捨て、完全なる全裸になると、両脇から志織と陽菜が千尋の膝裏を持って、全裸の女体をぐっと抱え上げた。
 清純そのものだった千尋が、女性にとって最も恥ずかしい姿勢であるM字開脚に抱え上げられたのだ。
 大勢のファンの目前に、無毛の秘部と、その下のすぼまりまでもを晒し出す。
 千尋は今や顔を真っ赤にして、息を荒くしている。嫌々をするように顔を横に振ると、汗で髪の毛が数本まとわりつくのが、凄艶である。
 しかし、彼女は涙の溢れる目を観客に向けて、震える繊細な指を柔らかな自分の秘肉に持って行き、綺麗な薄紅色の花びらをゆっくりと開いた。
「こ、これが、川端千尋の一番恥ずかしい場所です。どうぞ皆さん、よくご覧になって下さいっ」
 千尋の絞り出すような言葉を聞くまでもなく、彼はそこから目が離せない。
 柔肉と肉花びらが複雑に折り重なるその内部は、紅色がやや薄くなり、ぬめるように光っている。目のいい彼が全神経を集中してみると、下の方に空いた穴の入り口がひくつくのが見えた。
(あ、あれが千尋ちゃんのおまんこの穴……)
 そこに自分の固く勃起しているものを入れられるなら、死んでもいいと本気で思った。おそらく、今ここで視線を集中させている男の大半がそう思っているだろう。

「ああ……」
 千尋が悲しそうにうめく。全裸を見られて気を失う程に羞恥心の強い乙女にとって、男の視線は開いた肉壺に刺さるように感じるのだろう。
「ど、どうですか、喜んでいただけたでしょうか」
 震え声でさらに恥ずかしい問いを男達に向かって発するが、観客は余りのことに何も答えられず、沈黙だけが会場を支配する。
「ああっ、恥ずかしいぃっ……」
 沈黙に耐えかねたかのように千尋が泣き声を漏らすと、いくつか「頑張れー」や「おまんこ綺麗だよー」と言う声が上がる。
「あ、ありがとうございます、私も皆さんに見ていただけて、う、嬉しいです」
 そこでようやく千尋は二人に下ろされるが、足下がふらついて志織に支えられる。

 志織は全裸の千尋をしばらくぎゅっと抱きしめていた。そして、意を決するように、Tシャツを勢いよく脱ぐと、肉巨峰を揺らして自分も全裸になった。
 そして、女神のような彼女もまた、先程の千尋と同じように惨めな姿で仲間に抱きかかえられる。空中M字開脚で、そり上げられた淫猥な性器をファンの目前に捧げ出した。
 志織はその状態で耐えきれずに両手で顔を覆ってしまう。何度かすすり泣く声を漏らすと、千尋が耳元で何か励ました。
 ようやく指を股間にやると、少し赤くなった目で観客を見ながら、ゆっくりと秘花を開いて見せた。
「こ、ここが私の、高遠志織の、一番いやらしい女の部分よ。わ、私の覚悟、しっかり見てよね」
 真っ赤な顔でわななきながら、上擦った声で告げる
 志織の花びらは、大きく薔薇のようでぷるぷると震えている。内部は綺麗なピンク色で、肉豆も大きいのか鞘から出ているのが見える。ひくつく穴はやや下側寄りだった。
「ど、どう、私のここ、千尋のほど綺麗じゃないかもしれないけど……」
 呟くように言った志織の言葉に、右から抱えている千尋が恥ずかしそうに顔を背ける。
 それに対して、「綺麗だよー」「エロいー」等のの声が上がる。
「あ、ありがとう、私のいやらしいところも、全部好きになってね」
 無理に作った笑顔で精一杯可愛らしくそう言うと、志織は降り立ち、せつなげにため息をついた。

 最後に残ったのは、最年少の陽菜だった。可憐な顔に悲壮感を漂わせて震えている陽菜に、千尋と志織は哀しげに気遣う視線を向ける。
 しかし、それでむしろ覚悟が出来たのか、陽菜はTシャツをゆっくり脱ぐ。張りのある乳房をプルンと揺らし、しなやかな体が現れる。恥ずかしげに悶えてもなお、若々しいエネルギーが溢れる健康的な少女の裸体だった。
 そして陽菜も顔を真っ赤にして、恥辱のM字開脚に身を委ねる。元々年齢よりも未成熟な性器が、無毛になった今、更に幼く見える。それを前方に突き出した様は、幼女がおしっこをさせられているようで、観客の背徳感と興奮を煽る。
 陽菜はぴったりとくっついた一本筋に指を合わせると、幼い性器を割り開いた。
 露わになった秘密の花園はピンク色で、隠れていた小さな花びらと穴が、怯えるようにひくついていた。
「うぅっ……、あぅぅ……」
 食いしばった口からは嗚咽が漏れる。傷つきやすい秘所を観客に自ら見せつける恥辱に耐えるだけで精一杯なのか、陽菜は何度か可憐な唇を開いて何か言おうとしては、荒い息と嗚咽だけを漏らした。
 辛そうに言葉を出せない陽菜を見かねたのか、志織が観客に向かって口を開く。
「どう、陽菜ちゃんの。とっても可愛いよねー、みんな好きでしょー」
 観客は、それに卑猥な大歓声で応えた。
 陽菜はそれを聞いてぶるぶると震えたが、最後にようやく一言を絞り出した。
「あくぅ……こ、これが友利陽菜のおまんこですっ……あぁ……」
 陽菜の堅くつぶった目から、トマトのように真っ赤な頬に涙がこぼれた。
 ようやく辱めのポーズから解放された陽菜は、志織の胸に顔をうずめる。
 千尋も慰めるように後ろから抱きつき、三人の美少女は恥辱に傷ついた心を慰め合うかのように抱き合った。

「みんな、私達の覚悟を分かってくれたかな。女の子として絶対見せちゃいけない所まで、全部見せちゃったよ……」
「とっても恥ずかしかったけど、もう陽菜たちに隠すところはどこもありません。皆さんに喜んで貰うために、どんな恥ずかしいことでも我慢します」
「聖娼女ニンフェである私達の全ては、ファンの皆様に楽しんでいただくためのものです。この顔も、手も、腕も、足も、太ももも、おっぱいも、お尻も、そして……」
 言葉に合わせて、三人は体の部分を指し示す。
 お尻で後向きになり、丸く突き出る若尻を見せつけると、後ろを向いたまま上半身をかがめて足を大きく開いた。
「「「この、おまんこもです」」」
 三人は最も卑猥な単語を唱和しながら、高く掲げた美尻を振りながら、その下の秘裂を指で開いて観客席に見せつけた。
 背中ごしに振り向いた美少女達は、真っ赤な顔に可憐な笑顔を作り、世にも卑猥な宣言を実行するのだった。
「皆さん、こんないやらしい私達を応援してくれますか? 好きになってくれますかー?」
 千尋の問いに対して、観客席は興奮のるつぼになって、肯定の大歓声を三つ並んだアイドルの尻振りに叩きつける。彼も一緒になって意味の通らない大声を上げていた。

「ありがとうございまぁす。みんなの期待に応えるために、精一杯可愛くエッチに頑張ります」
「それじゃあ、最後にこの姿で三曲続けて聞いて下さい……」
 生まれたままの姿のトップアイドルが、その肢体の全てを見せつけながら歌い踊るという、ファンにとっては夢のようなステージが始まった。
 少女達は自分達のあられもない姿を忘れたかのように、眩しい笑顔で歌い踊る。
 だが本当は、忘れるために普段通りのパフォーマンスに集中しているのだということに、彼はすぐ気がつく。
 その証拠に、乳房を思い切り揺らしたり、大きく開脚して秘所を晒したり、お尻を振るような動作をする時には、上擦った興奮の表情の中から、抑えきれない羞恥が苦悶のようにが伝わってくる。
 その羞恥を、更なる興奮と集中力で抑え込み、妖精達は踊り続けた。
 普段のニンフェに比べれば、必ずしも細かいクォリティは高くないが、それ以上に異様な熱さのこもったパフォーマンスだった。
 その熱気と興奮を観客も共有して、声援でステージ上に返す。
 会場全体が興奮状態に包まれる中、彼は、全裸で恍惚と舞い歌う少女達の美しさに感動しながら、ずっと射精し続けているような感覚を味わった。
(ああ、ニンフェは最高だ、このために生きてきたんだ……)


   *
「あぁっ、はんっ、はぅぅんっ、凄いっ、社長っ、もう、いってしまいますぅっ」
 ステージの機材が並ぶコントロールルームに、甘い嬌声が響く。
 手塩にかけてきた少女達が全裸で踊るのを見ながら、松倉享司は高級スーツを着たまま、ニンフェのマネージャーの倉木美鈴の腕を掴み、後ろから犯していた。
 美鈴もスーツ姿だが、はだけたブラウスから巨乳が下向きにぶら下がって揺れ、タイトスカートも思い切りまくり上げられ、白くて大きな尻と太股がぶるぶると震える。三十前の熟れた体をのけぞらして、元アイドルは身も世もなく、よがり泣く。
「まだだ、もう少し我慢しろ」
「あんっ、そんなっ、はんっ、奥まで突かれたらっ、はぁぁぁんっ、耐えられませんっ」
 甘く懇願するのは、先程アナウンスをしていたのと同じ声である。大音量で音楽が鳴り響いているので外に漏れる心配はないため、思い切り声をあげている。
「ああぁっ、もうだめぇっ、いっちゃうっ、許してぇ、んあぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 限界に達した美鈴は、元アイドルの美貌を歪ませては、膣内の筋肉を思い切り収縮させる。それに対抗するように剛直が膨らみ、爆発するような脈動と共に、内奥に熱いしぶきを感じ取る。
 それは、丁度ニンフェが曲の最後にポーズを決めたのと同じ瞬間だった。美鈴は絶頂に達しながら、後ろからのしかかっている男も自分と同じく、舞台上の裸の少女達を見ていると感じた。

 胎内から、柔らかくなった肉棒が抜けていく。荒い息をつきながらも、二人は手早く身なりを整える。まだ重要な仕事が残っているのだ。

 松倉と美鈴が控え室に入っていくと、バスローブに身を包んだ少女達が、ソファーの上で抱き合うように身を寄せ合っては泣き声を上げていた。
 アイドルとして華やかに活躍していても、十代の少女である。性的に見られるだけでも、戸惑いと羞じらう繊細な年頃だ。
 もちろん、その若い美しさで人前に立つ以上、性的な視線を送る男は沢山いた。だが、強力な芸能事務所が堅くガードし、清楚さと実力を看板に売ったのである。その事を意識させられることはできる限り抑えられていた。
 何よりアイドル達本人の魅力が、性的な視線を自然な好意や憧れに変えてきたのだ。外見の美しさに惹かれて興味を持った男も、千尋の優美な気品、志織の誇り高い優しさ、陽菜の天真爛漫な快活さに触れると、彼女達の心根に夢中になった。
 それぞれ子供の頃から打ち込むものがあり、またアイドルになってからは学校にも行かずにレッスンと仕事に忙殺される生活を送ってきた。
 むしろ同年代の少女と比べてもプライベートで男性と触れ合う機会は少なく、自然と恋愛にも疎くなった。ファンが勘ぐる以上に、彼女達はイメージ通りの清純さを保っていたのである。
 そんな汚れ無き乙女が、大勢の男達の前で服を剥ぎ取られ、その傷つきやすい柔肌を全て晒した。少女の意に反して豊かに盛り上がる乳房や、くびれた腰から広がって突き上がる丸い臀部と滑らかな太もも、そして絶対に秘すべき罪深い淫肉の割れ目までも、全て獣欲の視線に暴かれた。
 少女達が、泣き疲れるまで子供のように泣くのも無理は無かった。

「よう、お疲れさん。良くやり遂げたぞ、お前達。アクシデントもあったが、全体としてはかなり上出来だ。客の度肝を抜いて、それでいて徹底的に満足させるエロさだったぜ。まずは、裏ニンフェのリ・デビュー成功おめでとうだ」
 松倉享司は、ニンフェが所属する芸能事務所イシュタル・プロモーションの社長である。
 十年前に芸能事務所の松倉プロを立ち上げてからは、破竹の勢いで人気女優やグラビアアイドルを多数デビューさせ、三十代半ばにして業界の風雲児と呼ばれている。
 伝説的な映画女優だった母親譲りの甘いマスクに、イタリア製スーツを隆と着こなす姿は、先程まで激しく美鈴と交わっていたことなど微塵も感じさせない。若き成功者のみが持つ自信に溢れた態度は、どんな女も一瞬惹かれる心を意識せざるを得ないだろう。
 しかし、口元に柔らかい笑みを浮かべてなお暗い凄みのある目つきは、どこか崩れた雰囲気を感じさせる。それすらも、芸能界の華やかさや、男らしさに表裏一体のものと感じさせた。

「わ、私、やっぱり嫌です。こんな事もうやりたくありません!」
 普段は強気な志織が、微かに恐れを滲ませながらも松倉に抗議する。
「今更何言ってるんだ。やる前も嫌がっていたけど、実際やってみたらきちんとできたじゃないか」
「こ、こんなに恥ずかしいなんて、分かってなかった……。ああ、もう死んだ方がまし……」
 そう言って、志織は再び泣き伏してしまう。千尋が哀しそうに背中をさする。
「初めてだからな、お前達が辛かったのはよく分かる。本当に頑張ったよ。でもな、一回裸を見せてしまえば、なんて事はないだろう、次からはもっと楽になるさ」
「でも、あんな事まで、……毛を剃るなんて酷い。あんなに沢山の人に見られて……」
 日菜が恨めしげに言うと、顔を手で覆って泣き伏す。確かに失敗が多ければ、そうなるかもしれないと言われていた。しかし、あの恥辱の中で失敗せずに済むことなどできただろうか。今回は乳房と下着を見せるくらいで終われるかもしれないとの当初の希望は、無惨にも打ち砕かれた。

「お互い納得するまで話し合ったはずだろう、それを今更ご破算にはできないぜ。まあ今はショックなのはよく分かる。とりあえずはゆっくり休んで、調子を整えておけよ。」
「あの……、やっぱり私、分かりません。こんな活動に、どんな意味があるんでしょうか?」
 千尋の言葉に、松倉は踵を返して出て行こうとしたところで、足を止めて振り向く。
「あ、あの観客数では、それ程利益が出るとは思えません。例え出ていても、こんな活動をしていることが世間に知られたら……、一体何のために、こんなことをしなければならないんですか?」
 千尋は、観客数、すなわち自分の卑猥な恥態を見る男達の多さに身がすくんだことを思い出す。一方で、ニンフェとして動員できる数を考えると、二桁も少ないだろう。恥辱に心をえぐられながらも、どうしても拭い去れない疑問だった。
「それは、お前達の考えることじゃない。心配しなくても、金の稼ぎようはいくらでもあるし、外に漏れることも絶対に無い。お前達は客を喜ばせることに集中しろ」
 にべもなく答える松倉の言葉はそれ以上の質問を許さない。だが千尋は納得できなかった。あんな非常識でふしだらな行為に合理的な理由を求めても仕方がないのかもしれない。でも、こんなに恥ずかしい思いをしているのだから、せめて社長がどんな思いでやらせているのか、それを知りたかった。
 しかし、男はそれに答えることなく、扉の外に消える。


「やっぱり、まだあの子達にはきつかったのでは無いでしょうか。いきなり毛を剃らなくても……」
 コントロールルームに戻ると美鈴が躊躇いがちに言う。
「まだ裸を見せただけじゃないか。今回はとりあえずの挨拶さ。これからもっともっと、過激にしていくんだぜ。あいつらにもある程度覚悟をさせておかないとな」
「でもあの娘達は、今回のが最大だと思っていますよ。体を見せながらコンサートをするのが聖娼女ニンフェの活動だと」
「ふん、それはそれでいい。ニンフェ自身が分かっているより、ある程度ハプニングにした方が良い、全部予定調和じゃ客は興奮しないからな」
「でもライブとしては、あまりにもリスクが高過ぎるのでは? 今回だってあの娘達が舞台に立ち続けることができるか、ぎりぎりでしたよ。毎回こんなにひやひやするのかと思うと……」
「大丈夫だ。なんだかんだ言って三人とも芯は強い。羞恥心にも慣れてくるし、そう簡単にぽっきり折れることにはならないさ。でも、メンバーの羞恥心の限界を見極めるのもお前の仕事だぞ。今回のケアも含めて、メンタルには気を遣いすぎるって事はないからな」
「それは承知しておりますが、実際にこれから、あの娘たちがどういう反応をするのか、不安です。そもそもこのステージに立たせるのもあんなに大変でしたから」
 美鈴は眉をひそめて溜息をついた。


 彼女たちが二年前松倉に見出され、イシュタル・プロのアイドルになったのは、それぞれのっぴきならない事情があった。
 千尋はバレリーナへの夢が絶たれそうな時に、国際コンクールに入賞すればすべての資金を松倉が提供する、さもなければアイドルになるという勝負をした。結果、15才の千尋は惜しくも入賞を逃す。
 志織は母親の手術費用を出すという理由で、アイドルになった。イギリス人の男と駆け落ち同然に結婚した母親は、離婚して日本に戻って以来病気に苦しみ、家計は志織が雑誌モデルで稼いでいる状態だった。
 陽菜は、空手道場を経営する父親が、陽菜に悪戯をしようとした男に重傷を負わせてしまったのを、松倉にもみ消して貰うことを条件に、アイドルになることを承諾した。
 その時に少女達は、性的な活動をする計画があることを、説明されてはいた。しかしその説明は曖昧で、今以上にうぶだった少女達は少しエッチな水着グラビア程度だと、希望的観測で自分を納得させたのだ。

 しかも、イシュタル・プロに所属してから一年は、徹底的に歌と踊りの訓練に明け暮れた。一流の教師による指導のもと、厳しくも真面目なレッスンの日々が続いた。そしてデビューしてからは、欲望渦巻く芸能界で事務所に固く守られてきた。
 そんな中三人は、裏での活動の話について、引っかかりを感じながらも思い出さなくなっていた。アイドルとしてニンフェが成功すれば、リスクのある活動をする必要など無くなるだろうと考えたのだ。
 あの約束は、ニンフェがアイドルとして売れなかった場合に、資金を回収するための保険のようなものだったのだ。もしかしたら、そもそも裏の活動なんてさせる気も無く、アイドルを真剣にやらせようとする社長の脅しの一種だったのではないか。そんなことまで話し合った。
 そして、ニンフェがトップアイドルになった以上もう非常識な裏の活動などありえない、そう安心していた。
 だから、デビュー一周年武道館コンサートが大成功に終わった後の、聖娼女ニンフェとしての裏活動の命令に、彼女達は驚き、激しく抵抗したのは当然だった。

 松倉は、情に訴え、理を尽くして、おどし、なだめて説得に当たった。
 そもそも裏活動についても承諾していたはずだ、今までさんざん世話になって、ここに来て約束を破るのか、芸能界では当たり前の枕接待をさせなかった代わりだ。もう準備は始まっている、今更中止したらその損害をどうしてくれる、等などである。
 少女達は泣いて嫌がった、アイドルとしてもっと頑張るからそれだけは許して欲しいと懇願し、そんなことをさせられる位ならアイドルを辞めるとも言った。
 しかし、少女達は二年間学校にも行かずにアイドル活動に集中してきた。周りの人間関係はイシュタル・プロを通した仕事のみである。助けを求められる大人はいなかった。特に、母親がまだ療養中である志織や、いつでも父親の罪を告発されかねない日菜にとっては、切り札を握られているのも同然だった。
 問題は千尋で、ある意味断固として拒否され、家族に助けを求められたら、松倉としてもどうしようも無い。どう説得するか、頭を悩ませていたところ、意外な申し出をしてきた。

「私だけが、聖娼女として活動しますから、どうか志織ちゃんと陽菜ちゃんは、許してあげて下さい。私が二人の分も頑張ります」
「……なぜ、自分だけ犠牲になろうとする?」
「志織ちゃんも、陽菜ちゃんも、家族を助けるために仕方なしに約束をしたんです。それで無理矢理いやらしいことをさせられるなんて、酷いです。間違ってます。でも私は、自分の望みのために賭をしたんです。それに負けたのだから……約束は守ります。だから、お願いです。どうか私だけにして下さい……」
 松倉は、千尋が申し出てきたことを、そのまま志織と陽菜に伝えた。それを聞いた二人は、泣きながら千尋だけにそんなことをさせる訳にはいかないと、ようやく聖娼女になることを承諾したのだった。


「根本的に嫌がっているのは、しょうがない。むしろそれが良いんだ。だから、清純派アイドルのニンフェを壊しても駄目だ。ぎりぎりの綱渡りをさせるようなもんだってのは分かってる。そこを上手くやってくれよな、頼りにしてるぜ」
「はい、社長」
 美鈴が現役の人気アイドルだったとき、さんざん芸能界上層部の男達のおもちゃになった。アイドルとしてちやほやされる一方で、醜い男達の欲望に貶められる屈辱。そのゆがみに耐えられず、精神のバランスを崩したところを、松倉に救われた。確かにその時に味わった経験は役に立つはずだ。
「でも、本当に大丈夫なんでしょうか、こんな大勢の観客に見せて……」
 自分達を特権階級と思っているような業界人ではなく、選び抜いたとは言え一般のファンも相手にこの裏活動をするのだ。正直、秘密が守られ続けるのか、とてつもなく不安だ。もし、ニンフェがファン相手に裸でコンサートをしていることがばれたら、間違いなくニンフェもイシュタル・プロも終わりだろう。
「そっちの方は心配するな。なあに、人間信じがたい話ってのは、実際目にするまで信じられないものさ。多少漏れたからといって簡単に広まる者でもない。それよりお前はニンフェのケアの方に集中しろ」
「はい」
 千尋と同じ疑問を美鈴も持っている。ただ、美鈴は松倉享司に対して絶対的な信頼を抱いていた。もし彼が破滅の道を選ぶなら、一緒にその道を進むだけだと思っている。

「ようやく、始まったんだ、俺の夢の実現が。この世界に風穴を開けてやる」
 松倉は熱に浮かされたように独りごちると、美鈴の腰に手をやり、抱き寄せる。美鈴は乱暴に服を脱がされながら、彼を受け入れる準備を始めた。

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序章(仮) リ・デビュー 2

-2-

 彼は暗闇の中、夢見心地で呆然としていた。
 今や日本中から愛され憧れられていると言っても過言ではない彼女達である。お茶の間のテレビに登場しない日はない、日本で最も美しい少女達が、ストリップショーのように裸体を自ら観客に晒したのだ。
 現実にあったこととは到底思えない。もうすぐ、学生時代から住む安アパートのベッドでパンツを濡らして目が覚めるんじゃないかと、本気で思っていた。

 夢見心地を破るように、暗闇から舞台上のスクリーンが光り出す。
 舞台の上から少女達は既に消えていた。
 滑らかな女性の声でアナウンスが流れ、スクリーン上にはそれに沿った映像が映し出された。
『古来より、芸能は性と分かちがたく結びついていました。
 歌を詠み舞を舞って権力者の寵愛を受けた白拍子。猿楽を舞い、性器に見立てた鰹節で神との交合を演じた伏見稲荷の阿小町。出雲の阿国から始まる女歌舞伎は幕府に禁じられるまで春を売る遊女が踊っていたのです。
 芸事教養を幼い頃から仕込まれた吉原の花魁は、数多くの芝居のヒロインになり、近代以降も、芸者が華やかに歌い踊った花柳界が政治や文化の裏舞台となりました。
 芸を磨いて非日常的な美しさを体現する女達は、性的な存在である一方、文化の発信源でした。人々に憧れられる偶像、正にアイドルだったのです。
 しかし現在の公序良俗の下では、アイドルは性的な存在であることを許されません。芸能の持つ、根源的な性の力は抑圧されているのです。
 これでは、芸能の真の力を発揮できない。人々を非日常に運ぶという役割を果たせません。
 我々イシュタル・プロモーションは、芸能の真の力を発揮する古代の巫女のようなアイドルを世に出したいと願いました。エロスの力を体現する本物のアイドルを!』

 彼は、いきなり始まった突拍子もない話を、ぽかんとしながら聞いていた。
 呆けた頭はうまく回らないが、先程の自分の感じた激しい興奮を思い出すと、なんとなく言っている意味が分かる気もした。

 スポットライトが再び舞台を照らすと、三人の美少女がポーズを取っていた。
 古代ギリシャ風のチュニックワンピースを着て花冠を頭に乗せている。薄くて軽い純白のチュニックは、繊細なドレープを作り、本当に伝説の妖精ニンフェのようだ。
(可愛いなあ、あの衣装凄く似合ってる。……でも、生地が薄すぎないか? 体のラインが透けちゃってるよ。生足にミニスカ丈だし)

『ニンフェがデビューしてから一年、皆様の暖かいご声援のおかげでアイドルとして大きく羽ばたくことができました。
 しかし、川端千尋、高遠志織、友利日菜という素晴らしい才能、それを世間の常識に縛られた活動だけに止めておくのはあまりに惜しい。
 一部の特別な人達にだけでも、彼女たちの美しさを余すとこなくお見せしたい。
 我々はそう考え、今日ここにニンフェ達が真の活動を開始することを発表します!!』

 スクリーンが派手に明滅して、デザインされたフォントの「聖少女ニンフェ」の文字が大きく浮かび上がる。すると、「少」の字が歪んで「娼」の字に変化した。「聖娼女ニンフェ」である。その下に「Re Debuet」と描かれる。

 先刻、上半身のヌードを披露した千尋は、恥ずかしそうに、それでも笑顔を作って挨拶をした。
「皆さん、改めて、私達に会いに来てくれて、どうもありがとうございます」
「みんな、ビックリしたかな? したよね……、凄く……」
 志織もぎこちない笑顔を作って観客に話しかける。
 陽菜も前に出て何か言おうとしたが、緊張と、羞恥のせいか、目に涙を浮かべて口を開いても声が出ない。
 うつむいてしまった陽菜をフォローするように、千尋が引き継ぎ、志織は陽菜の肩を抱く。
「先程発表がありましたように、私達は……ここで、もう一度デビューいたします。普通のアイドルとしてではなく、もう一つの裏のニンフェとして」
 その千尋も、微かに膝が震えていた。
「それは、あの……皆さん、さっきのステージで、今までと違うことにお気づきだと思いますが……」
 そこまで言うと、少女は言い淀み、深呼吸した。
「……私達ニンフェのセクシーな姿を楽しんでもらいたいと思います」
 千尋はそう言うと、耐えられなくなったように目を伏せた。
「す、すっごく恥ずかしいですけど、頑張りますから、お、応援して下さい」
 助けて貰った陽菜が、なんとか挽回しようと、どもりながらも声を出す。


 彼は、大好きなアイドル達が必死に羞恥に耐えている様子を見て、激しく混乱していた。
 憧れの少女達は、言葉とは裏腹に。性的な見世物にされることには抵抗があるようだ。うら若き乙女としては当たり前だろう。
 だったらファンとしてそんなものを望むべきではない。最も尊重し、守らなければならないのは、彼女達自身の意思のはずだ。何故、彼女たちが、このような卑猥な目に遭っているのかは分からないが、そんな事を強制させるのは絶対に許せない。
 しかし、恥ずかしそうにしながら、薄布をまとう彼女たちの美しさ、可愛らしさはどうだろう。彼女たちが恥じらいながら、その美しい体を露わにすることを考えただけで、先程の興奮が蘇り、再び肉棒がガチガチに固くなる。それを見る機会を拒否をすることは、彼にはどうしてもできそうになかった。

「みんなー、私達のエッチなところ見てみたいかなー?」
 志織が真っ赤になった顔を無理に上げて、自分を鼓舞するように挑発的に言う
 観客の中から、「見たいー!」「見たいぞぉぉぉぉぉ!」という気の狂ったような大声がいくつか挙がる。すると、それに同調するような拍手が始まり、それはすぐに奇声や口笛混じりの万雷の音量になった。
 そして結局彼も、その会場の雰囲気に飲まれる事にした。
(と、とにかく今は見守るしかない、ニンフェ自身がやっている事なんだし……。大体ここで暴れても、つまみ出されるだけだろう。怒ったり、抗議したりするのは、後で判断しよう、そうしよう)

 舞台上の三人の美少女は、トップアイドルとして受けてきた憧憬とは異質の、淫猥な熱気と視線に晒され、怯えるように身を寄せ合う。
 ようやく拍手が収まり始めると、やや引きつった笑顔で三人は観客に応える。
「皆さん、ありがとうございます」
「あ、ありがとー」
「それと、このシークレットライブは、少数の選ばれた人だけしか招待されません。
 このことは、絶対、ぜ~ったい秘密にして下さいね。そうしないと表のニンフェ自体が活動できなくなってしまいます」
「私達の、恥ずかしい姿が見られるのはシークレットライブだけだから。本当に、ここだけの秘密にしておいてね」
 それに対して、観客は吠えるような歓声で応える。


「それでは、皆さん聞いて下さい。HONEY HIP STING」
 アップテンポな前奏が大音量で流れ始め、三人の妖精は踊り始める。
 マイクは花冠にカモフラージュされ、伸びた蔦と蕾の形をしたヘッドセットだ。自由な両手を大きく振って、伸びやかに元気よく踊る。
 短めのチュニックの裾から伸びた白い生足が、軽快にステップを踏む。薄手の衣装は光の加減で艶めかしい女体の凹凸を透けさせ、薄布を押し上げるふくらみが上下に跳ね回る様もはっきり分かる。

 この歌は蜜蜂をテーマに、好きなのに素直になれずに憎まれ口を叩いてしまう女の子の気持ちを歌うポップチューンだ。甘い蜜をあげたいのに、つい針で刺してしまう、そんな乙女心を歌う、ダンスも可愛い曲だった。
(確かこの曲、お尻を振って見せる振りがあるぞ、しかも何度も)
 明るくコミカルな曲調なので、普段のニンフェの衣装なら健康的な微笑ましさが強調される。
(で、でも、この衣装で踊ったら、凄い事になっちゃうんじゃ……)
 薄いミニ丈のスカートが腰の動きにひらめいて、彼のパンチラの期待を煽った。
(スカートで激しい曲を踊る時は、いつもショートパンツを履いてたのに……)

 期待のパートに入る直前、素早いターンを決めた時、薄いミニ丈のスカートがふわりと広がりめくれ上がる。
(!?)
 予想を裏切って、一瞬露わになったのは、高く形良く突き出た、ぷりんとした生尻だった。
(ち、千尋ちゃんのお尻! まさか、Tバック!?)
 清楚そのものの美少女が、似つかわしくない過激な下着をまとっている。そのことだけで、彼の興奮は高まり、心臓が急ピッチで動く。
 そして腰を突き上げるように、お尻を強調して左右に一回ずつ振ると、薄布は跳ねるようにめくれて、美少女のまろやかな尻を見せつけるのだった。
 ひらひらと翻る布に見え隠れする、柔らかな臀部を一瞬たりとも見逃すまいと、彼は目を見開いて凝視した。
 再びくるりとターンして前を向いた千尋の顔は耳まで真っ赤だった。他の二人も同様である。剥き出しの尻たぶに舞台の空気と刺すような熱視線を感じたに違いない。
 それでも、少女達は歌を止める事無く、肢体を振り続けた。
 徹底的に体に叩き込んだ稽古の成果か、恥ずかしさを忘れるために集中しているのか、見事な動きで可愛いらしく華やかに、楽しさを表現する。
 だが、必死にいつものように明るく笑おうとする美少女達の笑顔には、隠しきれない羞恥心が、紅い頬や潤んだ瞳に表れていた。
 
 そんな可憐で卑猥なパフォーマンスに事件が起こる。
 曲の締めくくりに、半円に並んだ三人が、背を向けてから上半身をよじって、前を向く。ウィンクをしながら、腰をリズミカルに振って、お尻互いに軽くぶつけ合う振りだった。
 羞恥が限界に達していたのか、ようやく一曲終わると油断したのか、一番年下で三人の中でもマスコット的に可愛がられている陽菜が、千尋とお尻をぶつけ合った瞬間、よろめきバランスを崩す。
「きゃっ」
 曲のラストの金管とドラムが鳴る中、前に倒れて手を突き四つん這いになる。
 短いスカートは腰までめくれ上がった。未成熟で、鞠のような弾力を感じさせる、健康的な桃尻を前に突き出すように、観客に見せつけてしまう。
 小さな三角形の下着で辛うじて秘所は隠れていたが、可憐な妹系アイドルのはしたないバックスタイルに、観客は大盛り上がりで大歓声を送る。

「やあん!」
 慌てて千尋に助け起こされ、前を向いた陽菜は、真っ赤になってうつむいてしまっていた。
「ごめんね、強く当てちゃった?」
「ううん、私がぼうっとしてたから……」
 小声でやりとりする声もマイクに乗ってしまう。

「あ、あの、ごめんなさい、ちょっと失敗しちゃいましたぁ」
 陽菜は頬を紅潮させながらも、笑顔を作って観客にお辞儀をする。
 今までのステージでも、時にはアクシデントが起こる事もあった。そんな時も、前向きな可愛らしさとチームワークでフォローするのがニンフェだった。
 しかし、観客からは「陽菜ちゃん可愛いー!」「頑張ってー!」というお決まりの声援に混じって、「綺麗なお尻だったよー」「もう一回見せてー」などと言う言葉まで飛び出す。
 普段は元気が弾け出るような明るいショートカットの美少女は、また真っ赤になって顔をうつむかせてしまう。

(酷い事言うなよ、陽菜ちゃん可哀相じゃないか……)
 彼は下品な野次を飛ばす輩に憤るが、先程目に焼き付けたの美少女の卑猥な姿を、舞台上で消え入りそうな程恥じ入る可憐な様子に重ね合わせると、興奮がいや増すのを止められなかった。

『あらあら、陽菜ちゃん駄目じゃない。本番中に転んだりしちゃ』
 突如スピーカーから女の声が響く。どこか楽しむような色気のある美声で、先程のアナウンスと同じ声だ。
 舞台上の三人がはっと顔を上げた。
『実は今回のイベント、ステージ上で何かミスをした場合、ペナルティがある事になっているんですよお。三人とも、忘れてないわよね?』
 それを聞いたアイドル達はステージの上で怯えたように身を寄せ合う。
 これが普段のイベントならば、大げさに怖がって見せたりするところだ。
 しかし、陽菜はわななくようにして大きな目を見開き、志織は悔しげに唇を噛む、千尋は目をつむり、固く握った両手を重ねて胸に押し当てていた。

 三人は互いの顔を見てアイコンタクトを取る。何かに怯えたような表情で、少し悲しげな決意を込めてうなずき合った。
「は、はい、あの、皆さん……」
 陽菜が何かを振り切るように大きく前に一歩踏み出したが、途中で言葉が途切れる。
 仮面を着けた観客は固唾をのんで見守った。
 しかし、その猥雑な期待の高まりに気圧されたのか、陽菜は緊張した面持ちで震えている。両手を胸の前で強く握って、何か言おうとするのだが、上手く声が出せない。
 見かねた千尋と志織が両脇から陽菜の肩と腰に手を回して、抱き支えるように励ます。
 陽菜は目をぎゅっとつぶって深呼吸すると、絞り出すように言った。
「ペ、ペナルティは……、一つ失敗する毎に、ふ、服を一枚脱ぎます……」
 それだけ言うと、視線から逃げるように隣の志織の豊かな胸に顔を埋めてしまった。

(ま、まさか、今でも十分きわどい恰好なのに、ここで一枚脱いだらどうなっちゃうんだよ)
 どよめく観客の中で、彼は思わず生唾を飲み込む。

「も、もちろん、陽菜ちゃんだけじゃないわよ。連帯責任で私達も一緒に服を脱いじゃいます……」
 陽菜を慰めるように抱きしめながら志織が紅い顔で宣言する。

『はーい、そういうことね、今まで一つもミス無しで頑張ってきたけど、しょうが無いわよねえ。今ニンフェが着ているのは、その可愛いチュニックと、ハーフカップのレースブラ、それとおそろいのTバックパンティの三つだけ。サンダルとかアクセサリーは脱ぐものに入らないわよ』
 そこで、少し間が空く。どうやらヘッドセットを通じてアイドル達に指示が飛んだらしい。
 身を寄せ合っていたアイドルが名残惜しそうに離れる。そして着ているものを見せるために一人ずつくるりとターンを決めて、それぞれグラビアで撮るようなポーズを取った。

『チュニックを脱いだら、かなりセクシーなランジェリー姿になっちゃうわね。ブラをとったら、大きなおっぱいが透けちゃうかも。パンティを脱ぐと……スカートがめくれたら大変な事になるわねえ』
「あ、あの、ブラでお願いします!」
 陽菜が間髪入れずに叫ぶ。ノーブラの上に薄着となっても、他の二つよりかはまだ恥ずかしくないという乙女の消去法なのだろう。
 千尋と志織もうなずいて同意する。
『あら、みんなブラジャーがいいの? 確かに、もう皆さんにおっぱいは見て頂いているものね。透けるくらい全然平気かしら』
 そう言われて、三人の乙女は舞台上で恥ずかしそうに胸を押さえて横を向く。
 彼も含めて観客達が先程開陳されたの美乳を思い出しているように、アイドル達も激しい羞恥が蘇っているに違いない。

「は、恥ずかしいけど! この中ならブラしかないわ」
 志織が他のにされないうちに、という感じで手を後ろに回してホックを外そうとする。しかし、白い仮面の中から飛ぶ視線が自分の巨乳に突き刺さるのを感じたのか、ビクッと体をすくませる。

『だめよ、志織ちゃん。勝手に決めちゃあ。折角ファンの方々がこのイベントに参加して下さっているんですもの。会場の皆さんに決めて貰いましょう』
 固唾をのんで見守っていた観客席に波紋のようなどよめきが伝わる中、ニンフェたちは一様に驚きの声を上げた。
「ええーーーっ」「聞いてないです……」「そんなぁ!」

『はーい、皆さん、座席の裏側にリモコンがセットされてるんですが、取り出してみて下さーい』
 アナウンスの言われるまま、彼が中腰になり座作の裏を探ると、ケーブルで繋がれたプラスチックの直方体がマジックテープで留めてある。剥がして持ってみるとAからEの文字が書かれたボタンが五つ並んでいた。
 ステージのバックスクリーンが点灯する。3:00という時計表示と、A=チュニック、B=ブラジャー、C=パンティ、と言う文字が上から並んで映し出された。
『それじゃあ、ファンの皆さんは、ニンフェのどんな姿が見たいですかあ? 一番投票数の多かった服を脱いで貰いまーす。締め切りは三分後、最後に押したボタンだけが有効ですので途中で変えてもOKですよ』

 ニンフェ達は、本当に驚いているようでほとんどパニックを起こしていた。
「そんなぁ、ど、ど、どうしよう? どうすればいいの?」
「あ、あの、Bを選んで下さいね」
「ひ、陽菜の一生のお願い! 他のは嫌なの、Bにしてね」
「せ、せめてAにして下さい、Cだけは絶対に駄目です!」
 
 美少女達の必死の懇願を目の当たりにして、彼も又激しく動揺していた。
 先程はアイドル達の羞恥ステージを見守るしかないと思ったが、突然に憧れの存在を辱める権限を渡され、参加する事になってしまったのだ。

(ど、どうしよう、Bだよな、あんなに頼んでるんだもの、ファンとして男として当然だろ)
 そう考え、彼は断固としてBを押そうとした。
 しかし、どうしても押し切る事ができない、強い思いが彼の指を押しとどめる。
(もし、パンティを脱いで踊ったら、見えてしまうかも……千尋ちゃん達のあそこが)
 童貞である彼は、未だ女の秘密の場所を実際に見たことが無かった。せいぜいビニ本や裏ビデオで、美人とも言えない女性のそれを見たことがあるだけだ。
 その淫猥なグロテスクさは、彼を興奮させたが、自慰の後の空しさと自己嫌悪を増大させもした。
 そんな時には、憧れのアイドルのその部分を夢想した。実際には決して本物を見る事などないだろうと分かっていても、想像せずにはいられなかった。

 しかし、今、思いもかけない形で夢想が実現するチャンスを与えられた。何百分の一の権力だが、地上に舞い降りた天使に破廉恥を強いる事ができるのだ。
 彼女たちの秘密の女性自身は一体どういうものか、美しいのか、醜いのか、それを自分の目で見て確かめたい、その欲望が苦しくなるほどに膨らんで、彼はどうしてもそれに抗えない。
 そして舞台上のアイドルの秘部を隠そうとする必死さが伝わるほど、その秘密の部分を暴き、見たいという誘惑が、力を増して彼の中で荒れ狂う。
 ぶるぶると震える指がずらされ、彼はついにCのボタンを押した。
(ああ、ごめん千尋ちゃん、志織ちゃん、陽菜ちゃん……)

『さあて二分経過して残り一分。現在の投票数はこんな感じでーす』
 アナウンスの声が響くと、スクリーンの文字の横にデジタル数字が表示される。
 A:87 B:123 C:141
『あららら、意外や意外、結構ばらけてます。でもやっぱり、一番人気はCですねー』
 数字を確認したニンフェは、悲鳴を上げた。


「み、皆さん! 聞いて下さい」 
 二度ほど大きく深呼吸をした千尋が、ステージ中央の縁に立ち、大声で呼びかけた。
 男達の欲情と期待に満ちた視線が、薄布をまとった、たおやかな美少女に集中する。
 形の良い頬を赤く染め、黒目がちの瞳は潤んでいる。しかし、千尋はひるむ事なく真っ直ぐに観客達を見つめた。祈るように両手を胸の前で握った少女は、妖精のように儚げでありながら、高貴なまでに凛々しかった。

「私達、まだそこまでの心の準備ができていないんです。恥ずかしい恰好でも、皆さんに満足して貰えるよう、頑張って可愛く歌います。だから、お願いです、パンティを取るのは許して下さい。私達を好きでいてくれるなら、どうか猶予を下さい……」
 
 絶世の美少女の真っ直ぐなな懇願が、彼の心を打つ。清楚な千尋が、こんな恥ずかしいお願いを口にするのにどれだけ勇気を振り絞っただろう。
 それに比べて、仮面で顔を隠し、集団に紛れて、劣情を押しつけようとする男達の何と卑怯な事か。ファンの風上にも置けないと、先程までの自分を恥じ、周りの仲間達に憤った。
『6、5、4、3、2、1、……』
 いつの間にかアナウンサーのカウントダウンが始まり、その間もスクリーン上の数字は目まぐるしく変わる。千尋の訴えに、BとCの数字がシーソーのように上下していた。

 アイドルに対する崇拝にも似た憧れが蘇った彼は、歯を食いしばって内心の嵐に耐える。千載一遇の機会を逃した一生の後悔になるかもしれない、という予感を必死に押さえつけた。
『0』
 その瞬間彼の指はBを押していた。スクリーン上の数字は、A:87 B:206 C:207だった。

 志織と陽菜は手を取り合って喜ぶ。千尋は何も言わずに、観客に向かって深々と頭を下げた。



『あらまあ、良かったわね。会場の皆さんが紳士なファンで。それじゃあ、三人とも、ブラジャーを脱ぎましょうか。お願いを聞いて頂いた感謝の心を込めながら、脱ぐのよ』
 そうアナウンスが響くと、三人は喜びから一転はっとする。最良の結果ではあっても、これはペナルティだったのだ。
 三人はステージの縁に埋め込まれたされたプロンプターを見た。ライブ中歌詞等を表示するモニターで、演者の方向に向いているので、観客席からは見えない。どうやら、そこに何か指示が表示されているらしい。
「そ、そんなこと」
「いやぁ、恥ずかしい……」
 千尋と陽菜が微かに声を漏らすと、暫く三人は沈黙した。

「あ、あの、私から脱ぎます、陽菜ちゃんは最後で……」
 突然志織が言うと、舞台中央に進んだ。舞台が暗くなり、スポットライトが栗毛の少女にあたる。くっきりとした顔立ちと衣装が相まって、まるで本当にギリシャ神話の女神のようだ。
「皆、お願いを聞いてくれてありがとう。折角だから、取る前にどんなブラか見せてあげる」
 そう言って志織は、チュニックの肩から腕を抜いていく。チュニックの上半身が腰に留めたベルトの所までするりと下がり落ちた。
 なよやかな肩の下、山のように大きく盛り上がった巨乳が露わになる。薄いブルーのストラップレスブラはハーフカップで、深く柔らかい谷間はほとんど剥き出しである。

(やっぱ志織ちゃんのおっぱい、凄い大きさだ! 激しく踊ってて、どうしてあんなブラからこぼれ落ちないんだろう)。
 志織は、一瞬腕で巨乳覆うように隠すが、すぐに手を下ろして、にっこりと笑った。
 プロのアイドルらしい、輝くように美しい笑顔だが、日本人離れした白い肌がピンク色に上気して、お腹の前の手は少し震えていた。
「ど、どう、可愛いでしょ、このブラジャー。私は胸が大きいのであんまり可愛いのがないんだけど、今日のための特注品なの……」
 そう言って、志織は腕を後ろに回して胸を更に前に突き出すと、砲弾型の巨乳をゆさゆさと揺らして見せた。志織は、一瞬目を固くつぶったが、又慌てて笑顔を作り直す。
 それはファンにとっては衝撃的な光景だった。
 志織はそのエキゾチックで整った美貌とは裏腹に、明るく気さくな親しみやすい人柄で知られている。ラジオ等でも盛り上げ役になる事が多い。ただ、その大きなバストはコンプレックスらしく、話のネタにされるのをかなり嫌がっている風だった。一度だけ、胸が大き過ぎるせいでモデルの道を諦めたと、こぼした事があった。
 そんな志織が巨乳を見せびらかすが如く、はしたなく自ら揺らして見せているのだ。 
 彼は志織の内心を慮りながらも、大迫力の肉巨峰から目が離せない。
 しかし、中には無神経な奴がいる。口笛を吹いたり、「おっぱい、でかーい」「ぶるんぶるんだー」「サイズはどれくらいー?」等と、わざと恥ずかしがらせるような事を叫ぶ観客もいた。
 志織はそれを聞いて、潤んだ目で軽く睨み付けたが、又笑顔になって、
「サイズは、秘密。でも、特別にブラのカップだけ教えてあげる。……Hカップです」
 観客が大きくどよめく。
(あ、あれがHカップのおっぱいなのか……Hカップなんて聞いた事もないよ)

「さーて、それじゃあ、脱いじゃおっかな」
 そう言って志織は、左腕で巨乳を支えるようにブラを押さえ、前屈みになって背中に右手を回す。重力に引かれた巨乳が腕に潰され、その柔らかさを見る者に伝えた。
 その間も笑顔を絶やさず、観客の方を向いているが、頬の赤みは一層濃くなっていた。
 静まりかえる中、ぷちんと音を立ててホックが外れる。ブラを支えるベルトが外れ、前に垂れ下がる。上体を起こした志織は、胸を押さえたままブラを抜き取った。
 細い左腕一本では、巨乳を隠すのに十分とは言えず、下乳の丸みに観客の視線が突き刺さる。
 志織は、ふうっと溜息のような息を吐きながら、ブラジャーを舞台袖に放る。
 自由な右腕から、チュニックに袖を通し、今度は右手で左胸を隠しながら左手を通した。
 観客達は、淡い色の乳首がこぼれ落ちてくるのではないかと、固唾をのんで見守っていたが、慎重に動く志織は先端を守ったままチュニックを着直した。
「はいっ、これでおしまい。ノーブラになっちゃった。恥ずかしいから、あまり見ないでねっ」
 言葉とは裏腹に、最後に志織は上体を上下に動かし、また乳房を揺らして見せる。
 薄布ごしにも、押さえのなくなった肉巨峰が、互い違いに大きく揺れるのが分かる。
 その山頂が押し上げ、先端の形を浮かび上がらせていた。
 そして耳まで真っ赤にした志織は、後ろを向くと、口を押さえて逃げるように小走りに下がった。


 その後千尋と陽菜も同じ様に、胸の膨らみをはしたない見世物にして、ブラジャーを観衆の目前で脱ぎ取って見せた。

 基本的におとなしいお嬢様タイプである千尋は、どうしても羞恥心がブレーキになるようだった。Fカップだと告白した形の良い胸を突き出したものの、思い切り揺らして見せる事が、なかなかできなかった。しばらく小刻みにふるふると揺らした後、真っ赤になりながら、ジャンプをするようにして大きく揺らしていた。

 素直な陽菜は、笑顔を保つのが辛そうだったが、元気良く胸を揺らして見せた。ただ、ブラジャーを引き抜く時、勢いが強すぎて乳房が腕から飛び出てしまい、Eカップだと知られたお椀型おっぱいを観客に全て見せ、可愛らしい悲鳴を上げた。

 そして、トップアイドル達はブラジャーを脱ぎ去りが舞台上に並んで立った。
 チュニックの胸回りはそれなりに余裕のある作りになっているのだが、標準より豊かな膨らみが薄い布を思い切り押し上げ、先端の突起の形を浮かび上がらせてしまう。
 羞恥心を滲ませながら笑顔を作る少女達は、妖精のような清らかさでありながら、押さえがたい色気をはなっていた。

「それじゃあ、次の曲へ行きたいと思います、聞いて下さい」

 ギターソロから始まるイントロで、女の子の友情を切なくも力強く歌う「STAND!」だと分かる。ニンフェの曲では珍しいロック調の曲だ。
 計算されたライトの動きの中、三人はぴたりと息の合った動きを見せ、高らかに歌い始めた。

(す、凄い、おっぱいがぶるんぶるん揺れてる!)
 ブラジャーから解放された少女達の豊乳は、ダンスに合わせて、慣性の赴くまま上下左右に激しく動いて、その存在を激しく主張する。
 乙女達に、それが気にならないはずはない。しかし、あくまでも歌の世界を表現すべく、普段通りに伸びやかに歌い踊る。
 彼は彼女たちのプロ意識に感心するが、それが一層、乳房を揺らし踊る事態の異常さを強調させ、その部分ばかり目で追っていた。

 しかし曲も終盤にさしかかった頃、志織に事件が起きる。
「きゃぁっ」
 
 激しい動きの最中、チュニックの右肩の留め金が外れてしまったのだ。Hカップの動きの重さに耐えられなかったらしい。
 右半分の布が斜めに垂れ下がり、観客の目の前に白い巨峰とピンク色の先端が跳ね踊る。
 さすがの志織も小さく悲鳴を上げて、慌てて布を引っ張って直す。その直後、はっと表情を硬くする、取り返しの付かないミスをしてしまった時のように。

『志織ちゃーん、だめじゃない、ダンスを止めちゃあ。あのまま踊っていれば大丈夫だったのに』
 歌が終わった後のアナウンスは無情だった。
 志織は大きな胸を抱くように押さえ、何かを言い足そうにするが、唇を噛んで黙る。そして、小さく「ごめんね……」と呟くのみだった。
『それじゃあ、皆さーん、今度はどちらを脱がしたいですか? チュニックかパンティか、決めて下さいね』
 そう言ってスクリーンにはA:チュニック、B:パンティ、と表示される。

「いやぁっ、そんな……」
「ああ、許して……」
 陽菜と千尋が小さく、絶望的に呟いた。
『時間も押しているので、制限時間は三十秒。皆さん本能のおもむくままに決めちゃって下さいね』

(ど、どうしよう……。チュニックを取ったら、三人ともTバック一枚のほぼ全裸に。でもパンティを取ったらあそこが……)
 千尋にとってはどちらが嫌なのだろうと、考える暇もなかった。そもそも、彼女たちも選べなかっただろう。
 カウントダウンの最後、彼は期待に爆発しそうな心臓を押さえて、ほぼ無意識にボタンを押した。

『さーて、結果は……こちらです!』
 A:183 B:217
「きゃあああっ」
 結果が表示された途端、三人の足下に、小さな布きれがはらりと落ちる。その三角形の布は、間違いなく先程まで少女の股間の柔肉に貼り付いていたものである。何か仕掛けがあったのか、サイドの紐がほどけて落ちたらしい。

「ああっ……」
 アイドル達は思わず短いスカートの裾を押さえて恥じらう。
 羽のように軽く舞い上がってしまうスカートの下、最早柔らかい股間を守るものはなにもないのだ。
 
『これでノーパンになっちゃったわねえ。でも、だからといって恥ずかしがっちゃ駄目よ。もしミスしたら、もっと恥ずかしい事になっちゃいますからね』
 アナウンスが残酷に宣告すると、アイドル達はびくっと震え、絶望と恥辱の表情を浮かべる。
「い、いや……、こんなの絶対無理……」
「陽菜ちゃん、頑張りましょう……」
 陽菜が小声で泣くような言葉を漏らし、千尋が心配そうに肩を抱く。志織は、唇を噛んでうつむき、微かに震えていた。

(結局パンティを脱がされちゃった。千尋ちゃんがさっきはあんなに必死に頼んでいたのに、可哀想だ。やっぱりあそこを見られるのは、辛いんだろうな)
 うら若き乙女達の胸の内を思うと、彼は心が痛む。しかし、同時に、期待と興奮が押さえようもなく膨らみ、股間を硬くさせた。

「そ、それでは次の曲、『Heart』です。あ、いえ、少し待って下さい……」
 千尋が、曲紹介をしようとすると、またイヤホンごしに指示を受けているらしく、他の二人も顔を上げた。
「失礼しました、次の曲は『夕立ち』です……」
 
 弦楽器によるイントロが流れ出し、三人が爽やかな夏休みの恋愛ソングを歌い出す。
 それほど激しい振りのある曲ではないが、それでも、あの危ういスカートの軽さなら普通のステップでもめくれそうだ。
 彼は目を見開いて、ひたすらにひらひらと揺れる裾を凝視した。他の観客も同じように儚げな薄布とその下に視線を集中させる。男達の邪な期待で集中して、会場の温度が数度上がったような気がした。

 曲のサビの部分に入った時、ステージの後方で水が噴き出し、照明が当てられきらきらと光る。
『突然の夕立ち浴びて、笑い転げる君と僕、何があんなにおかしかったんだろう~』
 この間のデビュー一周年ライブでもあった演出だが、こんな小さなライブハウスでもやるとに驚く。
(こんな小さいステージじゃ、水がかかっちゃうんじゃ……)
 彼の心配通り、ニンフェが大きくステップしながら歌うと、ふり注ぐ水を浴びてしまう。少女達はそれを嫌がるどころか積極的に、濡れに行っているようにすら見える。

(あんな服で濡れちゃったら!)
 水しぶきを受け、濡れそぼった白い薄布はぴったりと、美少女達の体に貼り付いた。ほとんど裸と変わらないほど、柔らかな体の曲線を強調する。上下に踊る胸の先端で尖る乳首の桃色すら透けて見えた。
 柔肌は水滴を弾いて流れさせ、美少女達は恥じらいながらも歌い体を躍動させる、神秘的なまでに美しい光景で、彼はしばらく恍惚と見とれていた。

 ふと、彼はある事に気がついてうめいた。
 スカートが水を吸って重くなり、さらにはふとももに貼り付いて、先程のようにはひらめかないのだ。乾いていた時に比べると、その下が見えるほどめくれる可能性は低い。どうやら、アイドル達が布を透けさせながらもわざと水を浴びたのは、これが狙いだったのだ。
 それでも諦めきれずに凝視すると、千尋の股間に貼り付いた布に、黒い陰りが透けて見えた。
(ああ、あれが、千尋ちゃんのヘアー)
 妖精のような少女の生々しい恥毛に、彼は激しく心をときめかせ、さらにその奥を見られない無念を噛みしめた。

「それじゃあ、この衣装は次の曲が最後です」
 歌い終わった千尋がそう言うと、観客からは「ええ~~~~」と不満の声が漏れる。
 三人とも、お互いの姿を見て、自分達がどれ程エロティックな恰好をしているか確認している。ノーパンの股間を守るためとはいえ、ほとんど裸で踊っているのだ。この恥辱の時間が早く終わって欲しいと思っているのは想像に難くない。

 最後の曲はR&B調のダンスナンバーだった。ニンフェの曲の中では珍しい曲調だが、ダンスの実力が存分に発揮される曲だった。
(この曲、恥ずかしがりながらだったらミスしちゃわないかな……)
 レーザーライトと共に激しく踊り始めるニンフェを見ながら、彼は一瞬邪な期待を抱いてしまう。
 そんな思いとは裏腹に、ニンフェ達は濡れ透ける女体を見せつけながら、複雑な動きをスピーディにこなしていく。
 その美しさに思わず見入ってしまうと、改めて十代の少女が身につけた技術の高さに感動し、ファンとしての尊敬が戻ってくる。
(あんな恰好で踊るのは、本当に辛いだろうに。頑張ってるニンフェがミスしないかなんて、俺は最低だ……)
 そう考えた瞬間、千尋がくるっとターンをして後ろを向くと、スカートが舞い上がる。
(!! 今、一瞬見えた、ような……)
 めくれたスカートの下、確認する暇も無かったが股間の陰りが見えた気がして、彼の頭は沸騰した。
 観客席からはどよめきが起こる。
 薄い布はそれほど水分を保持できるわけではない。強力なライトに照らされ、激しく動いた事により、僅か数分で服は生乾きになりつつあった。

 もちろん舞台上の三人もそれに気がついていないわけがない。しかし、これ以上失敗するわけにはいかない。
 動きが激しいため、突き出て揺れる尻肉と違い、下向きの割れ目までは、なかなか確認できる程見えない。スカートがめくれる度に観客は焦れたような卑猥な歓声を上げ、興奮が最高潮に達していた。
 少女たちは苦悶にも似た表情を浮かべて、激しくも切なく歌い踊る。ひらめくスカートの下が気になりながらも、ニンフェらしからぬエロチックなパフォーマンスに彼は思わず心を奪われた。
 千尋がソロパートを澄んだ声で歌い上げた時、かれは違和感を感じる。
(歌詞を間違えてる! それは最初のソロの時の歌詞だよ)
 集中している三人はそのことに気がついていないようだった。周りの観客も殆ど気づいていない。

 激しく歌い踊る曲の最後、三人はぴたりとポーズを決める。
 千尋は左手を腰に当て胸を張って右手を突き出し、陽菜は右手を垂直に上げて左手を頭の後ろで曲げて添える、志織は横向きになって上体を水平にかがめて腰を後ろに突き出した。
 その瞬間、やり終えた満足感を漂わせていた少女たちの表情がこわばる。
 すると、その身にまとうチュニックが、前後に分かれて2枚の湿った布になると、少女たちの体からゆっくりと剥がれ落ちた。
「ああ……」
 千尋が思わず絶望にうめくような声を漏らす。

 日本中が熱狂するトップアイドルの少女たちが、今、ステージ上でフルヌードで立っている。ファンにとっては夢のような光景だった。

 陽菜は、垂直に上げた右手の二の腕に、左手を頭の後ろで曲げて添えて立つ。
 空手で鍛えた小柄な体は、羚羊のように引き締まって、まだ幼さを感じさせる。
 しかし、Eカップの乳房は丸く前方に突き出て、尻や太ももにも女を感じさせる丸みがあり、成長途中のアンバランスな色気を加える。
 股間のデルタには和毛が薄く生えているのみで、下の幼い割れ目を隠すにはいたっていない。しかし、その肉割れも柔らかそうな大陰唇が一本筋にぴったりと合わさる。恥じらうように中身を隠した未熟な秘部だった。
 恥辱の衝撃に耐えているのか、さらさらのショートカットの下、大きな瞳をうるませて見開き、口を半開きにしてわなないている。

 志織も白い肌を耳まで真っ赤にしてぷるぷると震えながら、両手で豊かなウェービーヘアをかき上げるように、後頭部にあてるポーズを保つ。
 大きな乳房が強調され、ピンク色の先端が荒い息に合わせて揺れる。腰はきゅっと締まり、尻も大きく張り出した過剰なまでに女らしい体だが、背の高さと手足の長さで、まるで女神のように完璧にバランスが取れている。
 叢のようにデルタに生えるヘアは髪の毛と同じように色が薄く、秘所を隠し切れていない。ぽってりとした肉厚の肉合いの真ん中から、綺麗なピンク色の肉花びらが二枚、閉じあわされたままはみ出ている。視線を感じているのか、身じろぎに僅かに蠢くそれは、心なしか濡れ光っているようにも見える。

 千尋は、真ん中で足を肩幅まで開き、左手を腰に当てて、右手をさしのべるように前に突き出す姿勢で固まっていた。
 背筋を伸ばした立ち姿は均整が取れ凛とした強さを感じさせる一方、ひたすらに柔らかで滑らかな曲線で作られた、触ったら溶けてしまいそうな程にたおやかな乙女の体だった。
 たっぷりと膨らむ胸の双丘すらも、その自然の曲線美でバランスを損なうことなく、女体美の極致に溶け込んでいる。
 股間の白いデルタのみに萌える黒い直毛も、細く慎ましやかで、その下の秘割れを僅かにしか隠していない。柔らかく丸みを帯びた肉畝の切れ込みから、紅の秘肉がほんのちょっぴり恥ずかしげに先端をはみ出していた。
 千尋の真っ赤になった頬を涙が伝う。瞳は正面を向きながら、どこか目の前の現実から逃れる術を必死で探しているようだった。時折膝が震え、激しい恥辱を強い意志で押さえつけながら立っているのもやっとな様が伺える。

 アイドル、その心と体の美しさで彼の憧れをかき立てて止まなかった少女達が、今、その裸体を秘所まで全て眼前に晒している。
 それがどんなに恥ずかしく辛いことなのか、彼女達の作り物でない清純さを知る彼には、ぶるぶると今にも気絶しそうな程耐えている様子を見なくても、痛いほどよく分かる。
 しかし、その耐え難きを耐えて、女体美の全てを見せているからこそ、一層の感激が湧き起こってくるのだった。興奮の絶頂の中、再び彼の肉棒が脈打ち、樹液を発射していた。
 
 その時間が数秒だったのか、数分だったのかも判然としない、音楽はとっくに終わっていた。

 遂に乙女の羞恥心に遂に限界が来たのか、千尋がふっと後ろ向きに倒れてしまう。
 反射的に志織と陽菜が、支えようとするが、二人も力が入らなかったのか、折り重なるようにステージ上に倒れてしまった。
 その瞬間、裸の美少女たちを照らしていた、照明が消え、暗闇だけが残った。

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序章(仮) リ・デビュー 1

 -1-
 暗がりの中、彼は居心地が悪そうに、もぞもぞと辺りを見回した。
 彼が座っているのは、大きめのライブハウスに並べられた座席の中程である。前方にはステージが広がっている。
 座席はのっぺりとしたプラスチックの白い仮面で顔を隠した男達で満席だった。シュールで薄気味悪い光景である。
 そして彼も同じ仮面を着けて座っている。この非現実的な光景の一部なのだ。
(まったく、一体なんだってんだ。アイドルのライブでこんな変な演出聞いたことないぜ。びっくりさせようってのか? それにしても趣味が悪いよ)
 彼はアイドルのライブイベントの観客として、ここに居るのである。

 川端千尋、高遠志織、友利日菜の三人の美少女からなるアイドルグループ「ニンフェ」。
 彗星のようにデビューしてから一年、人気は爆発的に急上昇を続けた。CMや音楽番組、さらにはバラエティに引っ張りだこで、テレビに映らない日は無いと言っていい。今や名実共に国民的アイドルと呼ばれるに相応しい存在に上りつめている。

 そして彼にとってニンフェは、今や人生の全てと言っていい存在だった。
 彼は、独身の公務員という環境の許す限り、時間も金も可能な限りニンフェのファン活動に注いでいる。
 幼少期から様々なアイドルのファンであり続け、いっぱしのマニアを気取っていた彼にとって、ニンフェを追いかけたこの一年は、奇跡のように特別な体験だったからだ。
 完璧なルックスを持ち、テレビ局やレコード会社の大きなプッシュの下デビューした彼女達を、初めはアイドルらしい初々しさや生っぽさに欠けていると、斜めに見る気持ちもあった。
 しかし、テレビ番組の受け答えでは幼いながらも健全な知性を、雑誌インタビューではアイドルという仕事への誠実な態度を、ラジオのおしゃべりでは普通の女の子らしさを感じた。
 何より、ライブに通い彼女達の生のパフォーマンスに触れて、彼女達がどれだけ真剣に自分達ファンを楽しませようと頑張っているかが、目の肥えたアイドルマニアの彼にも真っ直ぐに伝わってくる。
 彼は、ニンフェこそが自分が夢に描いていた理想のアイドルであることを確信し、この一年応援の最前線に立つことを全てに優先してきた。その甲斐あってか、ニンフェは瞬く間にスターダムにのし上がり、デビュー一周年記念の武道館コンサートでは、ステージ上の彼女達と共に彼も男泣きに泣いたのだった。

 その彼に、シークレットライブへの特別招待状が届いたのだ。法外とも言える高額の参加料にも関わらず、一も二もなくそれに飛びついた。絶対秘密厳守でそれを破った場合厳しいペナルティがあります、という脅しのような注意書きも、特別なイベントへの期待を膨らませただけだった。

 しかし、指定の集合場所に着いてからは奇妙なことばかりだった。
 仮面を渡されイベント中は絶対に取らないように指示され、厚いカーテンで窓が覆われたバスに乗せられた。大音量でニンフェの曲を聴かされながら、小一時間ほどバスに揺られ、ライブハウスらしきこの場所まで連れて来られたのだ。案内するスタッフに質問をしても、特別サプライズ企画ですから、としか答えなかった。
(まさか、騙されて何か犯罪に巻き込まれたとか……。でも、ニンフェファンを集団で誘拐してどうするんだよ、ありえないよなあ)

 その時、スピーカーからアナウンスが流れた。
『皆様、長らくお待たせしました。これよりニンフェ、スペシャルイベント「リ・デビュー」を開始いたします。まずは秘蔵ドキュメンタリームービーをご覧下さい』
(やっと始まるかと思ったら、映画かよ。折角の小さい箱でのライブなんだから、一秒でも長く生のニンフェを見せて欲しいのに)

 そんな歯がゆい思いも、ステージ上のスクリーンに映された映像ですぐに吹き飛ぶ。
(ああっ、千尋ちゃんだ。まだ若いなあ。デビュー前はこんな女の子だったんだ。普通の女の子の千尋ちゃんも可愛い)
 それはデビュー前からのニンフェの少女達の姿を追ったドキュメンタリー映画だった。今まで見たことの無い秘蔵の映像で語られる、アイドル達の素顔。それは、とんとん拍子にスターダムにのし上がったように見えるニンフェが、いかにストイックに努力を重ねていたのかの記録でもあった。
 デビュー前のレッスンに明け暮れる日々、歌も踊りも、なかなか要求されるレベルには到達できない。クラシックバレエの癖が抜け切れないと注意される千尋、年上なのにダンスの経験が無く他の二人に遅れていることに悩む志織、自信のあった歌を感情がこもっていないと否定され悔しがる日菜。テクニックが向上しても、今度は表現力に注文が飛んだ。それぞれに、何度も超えなくてはならない壁が立ち塞がる。
 何度も涙を流しながら、時には孤独に自分の力で、時には仲間と励まし合ったりぶつかり合ったりしながら、少女達は成長し壁を乗り越えていく。
(三人とも、こんなに苦労して頑張っていたんだ。厳しいレッスンの成果だって頭では分かっていても、いつも凄く楽しそうに歌っているから、どこかで、天才の彼女達は軽々とパフォーマンスをこなしてるような気がしていた……)
『私には、もうこの道しかないって決めたんです』
 インタビュアーに千尋が澄んだ声で答える真正面からのショット。化粧気のない透明な美しさは、整った顔立ち以上のもので、彼の心に突き刺さる。
(ああ、千尋ちゃん……君達はどうしてその年で、そんなに純粋で真っ直ぐな覚悟ができるんだろう……)
 そして念願のデビューを果たし、少女達は華々しく表舞台に立つ。これまでの苦労が報われるかのように喝采を受け、喜びの熱い涙を流しながら抱き合う少女達。
(あそこに僕もいたんだ。本当は馬鹿にする気が半分以上で見に行ったんだけど、行かなかったら一生後悔していたな)
 観客と感動を分かち合う喜びを知った少女達は、現状の自分達に満足しなかった。もっと大きく、より深く、ファン達との幸せの場を広げようと、さらなる努力を重ねる。
 忙しくなった状況と、華やかに一転した環境は、表から見えるほど順風満帆では無かったのだ。重圧やストレス、それに予期せぬトラブルが年齢的にはまだ子供の彼女達に降りかかる。
 そんな逆境でも、彼女達は真っ直ぐに立ち向かった。ファンのことを第一に考えできる限りのパフォーマンスで状況をフォローする。
(ああ、あの機材が故障したライブ、本当は新曲披露するはずだったのか。アカペラで歌ったり、観客と一緒に歌ったりした後、会場の出口で全員と握手して、ファンには伝説のライブになっちゃったけど、本人達は悔しかったんだなあ)
 必死で応援していた自分の思い出と重ね合わせてみると、舞台裏で頑張る姿に感動もひとしおである。
 そして武道館公演をやりきってステージに立つ三人をバックショットで捉えたところで、映画はエンドロールに入る。
 彼はその時の熱い感動を思い出しながら、堪えきれず涙を流していた。周りからも男のすすり泣く声が聞こえる。
『涙も笑いも共有して進み続けた三人が、ファンに感動を与えたいという、アイドルの原点を胸に夢の舞台へ到達しました。しかし、それはもうニンフェにとって一つの通過点になりました。これから彼女達の第二章が始まります。未だかつてない次元のアイドルになるために、ニンフェが新たにもう一つのデビューを飾るのです!』
 ナレーションが高らかに宣言すると、一瞬映像が消えステージが真っ暗になる。

 次の瞬間、スポットライトが舞台上を照らすと、三人の少女が映像の最後と同じポーズを決めて立っていた。奇声混じりの大歓声が爆発する。普段はおとなしい彼も、あらん限りの声を張り上げた。
(うわあ、近い! こんな小さい箱で間近のニンフェが見られるのなんて滅多にないぞ。高い金を払った甲斐があった)
 三人の少女は、腰の上までの短いマントを羽織り、チェックの制服風のスカートを履いている。マントの合わせ目からはスカートと揃いのベストが覗く。小さなシルクハットを頭の上に乗せ、目元は羽根をかたどったマスクを着けていた。
(デビュー曲の『ハート怪盗つかまえて』のPVの衣装だな、可愛いなあ! ライブでこれを着るのは初めてじゃないか)

「みなさーん、こんばんはー、千尋です」
「志織です」
「日菜でーす」
『みんなのアイドル、ニンフェでーす』
 ポーズを決めながら三人で声を合わせる。恒例の名乗りだった。何度見ても、直視できないほど美しく、それでいて目が離せないまぶしい笑顔に、見るだけで感激が湧き上がってくる。

「皆さん、いつも応援どうもありがとうございまーす」
「ニンフェのスペシャルイベントにようこそ-。今日は私達三人にとっても、記念すべき日になります」
「それは……これから全く新しいニンフェ、ある意味もう一つのニンフェを、皆さんにお見せするからです」
「あの、びっくりすることもあるかもしれませんが、どうか私たちを見守っていて下さい……」
 最初は元気いっぱい盛り上げようとするところのはずだが、少女達の話し方から、いつも以上に緊張しているのが伝わってくる。
 しかし、ここに居る選りすぐりのファンは、少女達の姿を見ただけで、ステージ上から煽る必要もない程興奮していた。初々しく緊張している様子を見れば、これからなにが始まるのかと期待を膨らませて、さらに熱狂的な声援を送る。
「ありがとうございます。それでは、聞いて下さい」

 破裂するようにドラム音が響き、スポットライトが跳ね回る中、優美な肢体が踊り出し、透き通るような歌声が響き渡る。
 『ハート怪盗つかまえて』、ニンフェの代表曲の一つだ。好きな男の子に声をかけられない内気な少女が、怪盗になって彼の心を盗めたらいいのにと願う、そんな乙女心を歌ったデビュー曲だった。
(おっPVの衣装だ! ライブで着るのは初めてじゃないか、可愛いなあ)

 だが、彼女たちが曲に合わせて両腕を上げて、マントを大きく跳ね上げた時、興奮に我を忘れかけてた彼は驚く。一瞬見間違いかと思い、彼女達の衣装を凝視して見たものが信じられない。
 少女たちは、本来着ているはずのパフスリーブのシャツを着ていなかった。
 首には衿とリボンが飾りのように首に巻かれているだけで、ベストの深いVゾーンから、柔らかい双丘の谷間を露わにしている。まろやかな突起は、踊りに合わせて窮屈そうに揺れて、今にも飛び出してしまいそうだ。
 手首に白いカフスだけを付けた伸びやかな腕は、柔らかな二の腕、なよやかな肩口を露出させ、腕を振り上げては脇の下を覗かせる。

 ニンフェはアイドルにしては珍しく、スリーサイズも公表していない。衣装も露出度が抑えめの、徹底的に清楚な路線で売り出された。だからこそ、短期間の内に男性ファンのみならず女性も含めた幅広い人気を獲得できたのだ。それでも穴を開くほど写真を見つめたファンの間では、隠れ巨乳説が語られ、熱い議論が戦わされていた。
(志織ちゃんのおっぱいが大きいのは分かっていたけど、千尋ちゃんや日菜ちゃんもこんなに大きかったなんて!)

 アイドルらしくレースで飾られたプリーツスカートも、可愛らしさを強調するミニ丈だった。
 それが、ダンスで腰が躍動した時、動きに合わせてまくれ上がるように翻る。
 視界には、柔らかく伸びやかな白い太ももと、そして乙女の股間を覆う薄布までもが飛び込んでくる。
(!? 今のパンチラってレベルじゃなかったぞ!)
 本来プリーツスカートの下にはパニエやショートパンツ等が履かれて、乙女の股間を視線から守っているはずである。ニンフェはこちらに関しても非常にガードが堅かったはずだ。
(あ、あれ、アンスコじゃなくて、普通のパンティじゃないか……)
 ターンでスカートが大きくまくれ上がって現われる薄い色の布は、見られることを前提とした厚手のものには見えない。丸みを帯びたお尻や股間にぴったりと貼り付き、秘密の部分を透かしてしまいそうな薄さだ。
 彼はアイドルのパンチラを執拗に狙うカメコ的存在を邪道として軽蔑していたが、長年の信念を捨てて今見ているものを全て写真に撮っておきたかった。

(ま、まさかニンフェが、こんな衣装を着るなんて……)
 実際にはステージ衣装としては、それ程過激な訳ではない。水着で歌うアイドルだっているのだ。
 しかし、そのような計算されたセクシーさのステージ衣装とは違い、もともと可愛らしい衣装の一部を無理矢理に剥いだような代物である。デビュー以来清純さを売りにして幅広い層に受け入れられたアイドルが着ていると、見てはいけないものから見ているような、危ういエロティシズムを強烈に感じさせた。

(一体どうしちゃったんだ、これが新しいニンフェの進む方向だって言うのか?)
 衝撃と興奮で血が上っていた彼の頭に、ふと冷や水が浴びせられる。
(本当にニンフェなのか……?)
 何しろ目の前の少女達は仮面で目元を隠しているのだ。ステージ上でアイドルが顔を隠すなんて演出としてはおかしい。
 先程の挨拶や、元気で透き通った歌声は間違いなくニンフェのものだ、しかしそんなものは録音素材でなんとでもなる。 
 彼は今までも釘付けだった舞台上の三人を、今度は別の視点で注意深く見極めようとする。
 清楚な長い黒髪の千尋は、元バレリーナらしくどんな動作でも優雅さが漂う。
 ハーフの志織は色が白く長身で、栗色のウェーブヘアだ。スタイルが良く手足が長いため、どんな動きも栄える。
 小柄でショートヘアの日菜は切れのいい動きで元気に踊っている。
 確かに背格好や特長はそっくりだ。目元以外の顔も本人にしか見えない。しかし、ダンスが微妙にぎこちない気がする。
 『ニンフェはなんと言ってもダンスが凄いんだよ』
 彼は、いい年をしてアイドルに熱を上げていることを知人に揶揄されると、いつもムキになってそう抗弁した。
 『あんなに完璧に踊りながら、歌える歌手なんて日本にほとんどいないよ。とにかく綺麗でカッコイイんだから』
 しかし、今見ているステージは、確かに卓越した技術を感じさせるものの、今まで何度も見たスムーズで切れのある動きと比べるとどこか物足りないように思えた。

(……もしかして、偽物だったりするのか?)
 ニンフェは先日デビュー一周年記念コンサートを武道館でやったばかりだ。今までの堅固なほどに健全な売り方から考えても、男女問わず大人気のトップアイドルが、突然こんな風に肌の露出をする理由がない。
(いやでも、マスクをしてたってあの三人を僕が見間違えるものか。そっくりさんか? でもあのニンフェをこんなに完璧のコピーできる娘がそんなにいるものかな……)
 彼の心は千々に乱れる。もし偽物ならば、ニンフェも、彼のニンフェへの純粋な思いも汚すようなステージである。
(あっ、また日菜ちゃんのパンツが見えた! いや、本当に日菜ちゃんかどうかは分からないけど……)
 疑いを持ちながらも、ステージ上の若々しく躍動する太股に目を奪われる。
 ニンフェのあられもないステージをあってはならないものとして憤慨する一方、見え隠れする若々しい肢体が、憧れの少女のものだったらと考えると、心臓が早鐘のように脈打つ。本物であって欲しい気持ちと、偽物であって欲しい気持ちが、ファン心理の中でぶつかり合った。

 曲が終わると、少女たちはシルクハットを舞台の袖に放る。そしてマントもするりと外してしまった。
 これで美少女達の体を覆うのは、マスクやアクセサリーを除いて、まろやかに広がる下腰を覆うミニのプリーツスカートとぴっちりと体に張り付くベストだけになった。どこか危うさを感じさせる、妖しい姿で舞台に立つ。

 目元を覆っていても、ステージに立つ少女達の頬は紅潮は隠せない。見るからに緊張しているのが伝わるが、アップテンポの音楽が流れ出すと、リズミカルかつ滑らかに踊り出す。
 これもファンにはお馴染みの曲、『RAINBOW TRAIN』だ。夢に向かって頑張る少女の気持ちを歌った、ガールズポップらしい元気な応援ソングである。
 透き通る少女達の歌声が響くが、どこか緊張の固さがある。
(あれ、これはCD音源じゃないな。じゃあやっぱり……いや、初期のライブ素材かも)

 曲の途中、ニンフェがいつもの振り付けと違う動きをした。
『RAINBOW TRAIN』では間奏の時に、三人が円になり、左手をハイタッチのように上げて合わせて回る特徴的な動きがある。ところが、円になった三人は、手を上げるかわりに左側のメンバーの胸へと手を伸ばした。
(! ボタンを外しちゃった!)
 少女達はお互いに、ベストの三つボタンのうち一番上のボタンを外してしまった。
 二つのふくらみが押しつけあう胸の谷間が、上半分のほとんど頂点に近いところまで露わになる。
(う、嘘だろ、ノーブラなのか!?)

 先程まで盛り上がっていた周りの観客も、戸惑うような空気が広がる。だが徐々に露わになっていく少女の胸元への視線は、むしろより熱さを増しでいた。
 その間にも明るい曲は進み、ステップに合わせてスカートが何度もめくれ上がり、解放された胸が大きく揺れ、彼の心をかき乱す。
 そして再び同じ振りの部分で、前と同じ動きが繰り返された。
 今度は一番下のボタンが外される。健康的な縦長のおへそが見えるようになった。
 今や、ベストは真ん中のボタンのみで止まっていて、さらに少女の肢体の危うさが強調される状態だった。
(た、確か、あの振りはもう一度あるけど、まさか……)
 彼は、固唾をのんで見守る。いつしか、彼の股間は硬く勃起してズボンを押し上げていた。
 そして、三回目のハイタッチをするべき間奏。三人の少女は、仮面の観客が見守る前で、ついに最後のボタンを外してしまった。
 ベストが胸で前に押し出されて垂れる。引き締まって美しくもなだらかなお腹と、弾む双丘の間の胸板が見える。そして形良く突き出る胸乳のなだらかなラインも。

(ベ、ベストが動いたら、おっぱいが見えちゃうんじゃ……。いや、ここまでやったら、間違いなくニンフェじゃない!)
 扇情的な胸元から目が離せないまま、彼は偽物だと確信する。
(きっと松倉プロの巨乳グラドルをニンフェのそっくりさんとして売り出す気なんだ。松倉社長の仕掛けだな。馬鹿にしやがって、ニンフェファンとして絶対許せない、ただじゃ済まさないぞ!)
 彼の中で、騙されたことに対する激しい怒りがわき上がるが、なぜか欲情の方も一層ヒートアップする。
(偽物のくせに、上手く踊って期待させやがって! お前達おっぱいをぶるんぶるんさせるくらいしか能がないアイドルとニンフェじゃ格が違うんだぞ。それに、見せるんだったらさっさと全部見せろ!)
 しかし、それから曲が終わるまでの短い間、開いたベストは彼の望みを弄ぶかのように揺らめいては元に戻る。まるで、胸の頂点で布が固定されているかのようで、結局少女達の胸のふくらみの頂点を見せるほど開くことはなかった。

 今や他の観客もあまりのギャップに驚いたためか、それとも本物か疑っているのか、先程の熱狂はどこへやら、静まりかえってしまった。だが、少女達の素肌に期待を煽られているのか、野次などは飛ばない。
 そんな観客を尻目に、次の曲が始まった。バイオリンが美しいメロディを奏でる。『月に見下ろされて』恋をしてはいけない人を想い、諦めきれない恋心を切なく歌う、メロディアスな美しい曲だ。
 三人の少女は観客に背を向け後ろを向く。『月に見下ろされて』のいつもの入り方だった。
 しかしここで、三人の少女はベストをするりと後ろに脱ぎ捨てたのである。
 その滑らかな動きに、彼は一瞬何が起こったのか理解できなかった。肩胛骨が浮き出て中央に溝が走る、なよやかな少女の背中を呆然と見つめる。
 歌の出だし、志織役の少女が優雅にターンして前を向く。
 両手を交差させ、胸を抱くようにして、乳房を隠していた。それでもその大きな乳房は完全に隠れず、上と下の柔らかい曲線が細い腕からはみ出ている。遅れて後ろの千尋と日菜も、同じように胸の膨らみに腕を押しつけ、たおやかな肩をすくめながら前を向いた。
 三人の少女が恥じらって胸を隠し、切なそうに体を揺らしながら透き通る声を響かせる。
 そのエロティックな美しさに、彼は目の前の出来事が現実とは思えなかった。

 三人は歌いながら踊り始めた。スローテンポなこの曲の振りは、ゆったりとではあるが大きく体を動かす。
 本来は両手を使う振り付けでも、常にどちらか一方の腕は乳房を抱いて守り、頂点を見せることはなかった。しかし、左右の腕を交換したり、ダイナミックなポーズを取る度に、乳房が細い腕からこぼれ落ちてしまいそうになる。
 その危うげな、見えそうで見えない動きに、彼は理性が灼き切れそうな程興奮する。
(くぅっ、今千尋ちゃんの乳首がもうちょっとで……、いや、千尋ちゃんじゃない、本物じゃないんだ)
 例え本物じゃなくても、これだけそっくりで、エロティックなニンフェを演じてくれるなら、それもいいじゃないかという考えが頭をよぎる。
(いや、だめだ、だめだ、そんなの松倉社長の思い通りじゃないか! こんなの本物に失礼だよ! 本当に一体何がしたいんだ)

 曲がサビに入る。三人は位置を順繰りに交換しながら歌い、踊る。
 志織が両腕で胸を隠しながら中央に立ち、ソロパートに入る。一瞬何かに耐えるように唇を噛み、そのせいか出だしがかすれた。
 震える歌声を切なく響かせながら、右手でマスクの端をつまみ、ゆっくりとした動きで両手を横に大きく開いた。

 ぷるんと揺れながら、女の象徴とも言うべきまろやかな乳房の全てが観客の前にまろび出る。
 それは、大きさに反して砲弾のように思い切り前に突き出ていた。色が透けそうに白く、やや大きめの乳輪も色素が薄く、綺麗な薄桃色だ。先端に突き出る乳首は、突き刺さるような熱視線に怯えるように震えていた。
 そして、ついにマスクが外され露わになったその素顔。英国人の血が混じった、彫りが深く優美でいながら東洋人らしい柔らかさもあわせ持つその顔は、見間違えようもなく高遠志織本人である。
(し、志織ちゃん、本物の志織ちゃんだ! ま、まさかそんな、あり得ない……)
 彼は雷に打たれたようにぶるぶる震えながら、目を見開いていて、トップレス姿で歌う高遠志織を見つめた。
 彼が全身全霊をかけて応援してきたアイドルが、女の象徴とも言うべき豊乳を剥き出しにして見せつけている。今見ている光景が、到底現実のものとは思えない。
 そして実は、志織は彼の自慰のおかずとして最もお世話になっている。何度も想像に描いたその乳房が、想像以上に美しいことに、彼は感動していた。

 ソロパートが終わる。志織はまた胸を両腕に抱きながら、素早く日菜と入れ替わる。
 そして、ショートカットの愛くるしい美少女もまた、同じように隠していた顔と乳房の守りを解いた。その細い腕は明らかに震えている。仮面を外された大きな瞳から、一筋の涙が真っ赤な頬の上を伝う。
 出てきたのはふるふると揺れる、おわんのようなおっぱいだった。健康そうな薄小麦色の肌が形良く盛り上がり、小さめの乳首は野いちごのように美味しそうだった。同年代の少女の平均よりはかなり大きめだろうが、志織の巨乳に比べると小さく見える。日菜の可憐な歌声に合わせて微かに震えてているのがとても可愛らしい。
(日菜ちゃんのおっぱい……本物の日菜ちゃんのおっぱいだ! 可愛いくていやらしくて、たまらないよ)
 可憐な風情に、見るのを罪悪もに感じながらも、目は離せず、興奮は高まるばかりだった。

 そしてついに、千尋が入れ替わってフロントに立つ。
(ち、千尋ちゃん、千尋ちゃんも本当に本人なのか、そしておっぱいを……)
 三人の中でも、彼が最も憧れる美少女であり、女神のように崇拝している存在だった。
 彼はしばしば志織と陽菜の性的な妄想で、自慰にふけった。しかし、千尋に関してはそれができなかった。それをやろうとすると強い罪悪感に襲われ、自分が汚らしい存在に思えてしまうのだ。
 その千尋が今、慎ましく隠されていた乙女の乳房をさらけ出そうとしている。彼女は頬を紅潮させ、けぶるような瞳には悲壮なまでの決意が見えた。
 彼は、見たいという燃えるような欲望と、見てはいけないという強烈な罪悪感に、心が引き裂かれそうだった。
 期待と畏れに震える時は一瞬に過ぎ、千尋は仮面を外し、腕をゆっくりと開いた。
 白くまろやかな半球が、腕の押さえから解放され、柔らかさと弾力を示して揺れる。男達の衆目に暴かれたそれは、奇跡のように滑らかな曲線を描いていた。真円の桜色の控えめな乳輪と乳首だけが視線の最前線で恥ずかしげに揺れる。
 巨乳と言っていいほどの豊かさで有りながら、重力に逆らう完璧な形が、下品さをみじんも感じさせない。むしろ自然の作る女体美に、神々しさに似た感銘に打たれる。
 まろやかな双丘が彼女の透き通った歌声と共に微かに揺れるのを見て、彼は頭が真っ白になる。快感が股間を貫き、指一本触れないのに射精したのだ。膝ががくがく震えて崩れ落ちそうになるのを必死で耐える。

 最後のパートで、後ろの二人も前に出ながら再び腕を開く。三人の少女がそれぞれの美乳をたわわに揺らしながら、優雅に舞い踊り、ハーモニーを響かせる。
 その夢のような美しさを現実のものとは信じられないまま、曲が終わりライトがゆっくりと消えていった。

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登場人物紹介


<ニンフェ>

川端 千尋
 17才 159cm  B89(F) W58 H90
 切れ長で黒目がちの瞳、黒髪ロングストレートの正統派美少女
 幼い頃からクラシックバレエにうちこみ、中学生の頃は国内コンクールの常連受賞者だった。
 柔らかく浮世離れした雰囲気があるが、芯は強い
 父親は公務員、母親は専業主婦。兄が一人

*ニンフェに参加する理由
 千尋は幼い頃から習っていたバレエで才能を発揮して、バレリーナとしての将来を期待されていた。
 国内コンクールで何度か優勝し、いよいよ国際コンクールに挑戦して留学をも視野に入れていた時、父親の経営する会社が傾き、さらに兄が私立の医学部に合格する。
 それまで千尋のバレエを応援しサポートしていた両親だったが、兄の医学部進学のために大金がかかることから、これ以上千尋のバレエ活動に援助できないことを宣告する。
 その時に松嶋が表れ、千尋に援助を申し出る。それは国際コンクールへの参加費用等はすべて出す。そこで入賞して奨学金を手に入れたならば、その費用の返還は不要だが、もし入賞できなかった場合は、松嶋の下でアイドルになるというものだった。
 結果、強力なライバルの出現により、千尋は入賞に届かなかった。そして、千尋はその時の賭の約束を律儀に守り、ニンフェの裏活動にまでその身を捧げることになる。

高遠 志織
 18才 170cm B94(H) W60 H92
 イギリス人の父親をもつハーフ。
 栗色のウェーブした髪の毛と、目鼻立ちのはっきりした美貌を持つ。
 生まれは日本だが、イギリスに住んでいた時期もある。その時聖歌隊に所属していたため歌は得意。
 日本に戻ってからは雑誌モデルをして、病弱な母に代わって家計を支えていた。
 父親の不倫で両親は離婚したため、男性不信気味である。
 見かけはクールビューティっぽいが、本当は優しく情にもろい性格で、三人の中ではお姉さん的なポジション。

*ニンフェに参加する理由
 もともと体の弱かった母親がガンにかかる。早期に発見できたとはいえ手術代と、その後の治療費は大金だった。
 そこに松嶋がアイドルの契約金として手術代を出すと申し入れ、志織は母親の命を助けるために、否応もなくそれを受ける事になる。


友利 日菜
 16才 153cm B87(D) W58 H89
 濃茶色のショートカットで、瞳の大きい童顔で可愛らしい顔立ち。
 
 父親が空手道場を開いており、幼い頃から空手を習っていた。特に型が得意で、小学校、中学校の頃は大会で優勝した事もある。
 その運動神経を生かして、ダンスはかなり得意。
 実は少女漫画・アニメが好きで声優になる夢があった。元気溌剌のスポーツ少女だが、実は夢見がちな乙女。

*ニンフェに参加する理由
 沖縄出身の日菜の父親は、東京近郊の街で空手道場を開いていた。
 小さな流派の師範として経営は楽ではなかったが、日菜が大会で優勝するなどの宣伝効果もあり、近くの少年少女の生徒を集めて、なんとかやっていた。
 そこに、道場に融資していた街金の社員が日菜につきまとい、卑猥なちょっかいをかける。
 怒った父親は、弾みでその男に重傷を負わせてしまう。
 空手家の起こした傷害事件として大問題になるところを、松嶋が現れ解決の手をさしのべる。
 その時の事件をもみ消す条件が、日菜がアイドルとなることだった。日菜はその申し出を受ける。通常のアイドル活動のみをするのだと信じたまま、父親は道場をたたんで沖縄に帰ることになる。


<イシュタル・プロモーション>

松倉享司
 34才
 ニンフェの所属するイシュタル・プロモーション社長。同系列の芸能事務所、松倉プロダクションの社長でもある。
 伝説の映画女優、松倉沙奈江の息子であり、実父は広域暴力団関東侠和会の幹部である菱村玄蔵。
 松倉プロダクションは菱村組の企業舎弟でもある芸能事務所で、新興だが菱村組の後ろ盾と松倉の手腕で大手に近い存在。
 表の世界で大人気である一方、秘密裏にそのセックスを売り物にする裏アイドルを生み出すため、イシュタル・プロモーションを立ち上げ、ニンフェを大々的に売り出す。
 菱村組の跡目を継ぐ話もあるが、本人はヤクザの世界に入る気はない。

白木美鈴
 29才
 元アイドルで、ニンフェのマネージャー。
 松倉に心酔しており、イシュタルプロモーションでは松倉の片腕として働く。

 
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